津軽系こけし

散り行く花の津軽系こけしのレビュー・感想・評価

散り行く花(1919年製作の映画)
4.2
安らかに


【どうしたグリフィス】

🟥「國民の創生」の監督が撮ったとは思えない。優しさに溢れる悲恋のストーリーです。

🟦主人公の青年は、仏教の教えを広めるために中国からロンドンへ渡ります。しかし崇高な夢もロンドンの厳しい世情に粉砕され、阿片(アヘン)を吸う日々に陥ってしまいます。

どん詰まりの現実に絶望していた矢先で、ルーシーという女性に恋をします。彼女は残虐な父の暴力から逃れるため、疲れ切った足取りで青年の所へ寄ります。青年は彼女を癒しながら愛を深めてゆき、ついに2人の間に詩情まばゆい愛が生まれてゆきます。

【美しい恋】

🟪ルーシーを演じるリリアンギッシュの美しさに惹かれます。彼女の情緒極まる陰影が、モノクロの愛模様に深みを与えています。

グリフィスの作品に限った話ではないけれど、サイレント映画は感情を表す時にあえてアクションを起こさない描写が多い。青年とルーシーの間にロマンが生まれる時、ただ見つめ合う静止のような画面が目立つ。恋に落ちるシーンやカタルシスが生じるシーンは、どの映画でも役者が止まる。無手勝流の運動王チャップリンもロマンスの前ではほとんど静止をする。運動の媒体たる映像において多くの作家が静止に感情を見出しているというのは不思議な話に思える。

蓮實さんの言っていた「存在の色気」というのはこういう時に生まれている気がする。

【まとめ】

🧂ともかく「國民の創生」とのエライギャップに驚きつつ、ロマンスを堪能できる作品だったと思います。
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