マンハッタンでダンサーのバービーと、その日暮らしをしているミュージシャンのロッキー。ある日、デパートに勤めるアンジーが妊娠してしまったことを伝えに突然現れた。2人は以前一夜を過ごしたことがあったのだ。ロッキーに、責任があるから堕胎してくれる医師を探すと告げられ、アンジーは憤慨。アンジーの狭い家に自室はなく、母や兄達の過干渉にも参っていたが、独立する甲斐性はなく、料理人コロンボとの結婚を勧められていた。ロッキーとなけなしのお金を掻き集めたアンジーは、いかがわしい女医のいる一室を訪れるのだが…。
「アラバマ物語」等の名作を生んだロバート・マリガン監督×アラン・J・パクラ制作によるラブストーリーで、主演は人気絶頂期のナタリー・ウッドに、大ブレイク前夜のスティーヴ・マックィーンという、なんとも魅力的な布陣。中絶手術が非合法だったこの時代に、ワン・ナイト・スタンドからの妊娠発覚で、初めてお互いのことを知っていくという、なかなか前衛的な作品。手術代を掻き集める過程で、思いがけずお互いの家族に出会うことになってしまう流れもおもしろい。2人共貧しいイタリアの移民育ちで、家庭の事情や結婚観の違いの描かれ方は興味深かったです。ロッキーとバービーがたくさんのワンちゃんと暮らす家、アンジーが勤めるデパートのディスプレイ、マンハッタンの街並み等、当時の雰囲気も楽しめます。
主演のアンジー役に、ナタリー・ウッド。「ウエスト・サイド物語」の2年後で、当時25歳。髪型もファッションもめちゃくちゃ可愛いです。さり気なく頭に巻くストール、コートやハンドバッグも小柄な彼女にぴったりで素敵。ただ、このアンジーというキャラがヒステリックで気難しくて、なかなか好きになれませんでした。ロッキー役には、スティーヴ・マックィーン。「大脱走」と同年の作品で、当時33歳。クールなタフガイのイメージからはかけ離れた、遊び人で優柔不断な役柄が新鮮ですが、デリカシーのない言動の数々は、女の敵に違いありません。アンジーの兄に殴られたアザを気にしてはにかむシーンは意外にも可愛かった。ナタリー・ウッドとの並びは画になっていて素敵でした。