ヒロオさん

紳士協定のヒロオさんのレビュー・感想・評価

紳士協定(1947年製作の映画)
3.6
反ユダヤ主義について、記事を書くことになった記者。
問題の核心に真に迫るため、自らユダヤ人と名乗り、差別の実態を肌で感じていく。

時代に鑑みると、なかなか骨太な作品。
今以上に人種差別が根深く、題材として取り扱うことがタブー視されているなかで、本作を作った勇気は凄い。

メッセージがはっきり提示されているタイプの作品なのだが、その矛先が視聴者自身へ向けられている点からも、意欲作だと感じられた。

特に、「自分は差別をしない」と言う「良い人」が、無意識のうちに差別に加担していることを指摘している。
申し訳程度に差別に反対するだけで、結局は差別を見て見ぬしている多くの人々の欺瞞を批判している。

ただ、私としては引っかかる点がいくつかあり、良作とは思えなかった。

まず第一に、肝心の記事の仕上がりが期待外れだった。
内容が全然心に響かない。
本当に差別と向き合っていたら、そんな説教くさい記事は書けないのでは?
お話だから仕方ないにしても、ほんの2か月、ユダヤ人と名乗っただけで、差別される気持ちをわかった気になっている主人公が、知性ないなぁと思ってしまった。

また、ラブストーリーのパートも長すぎる。
尺の半分くらい使っており、さすがに主題から脱線した印象を受けた。
しかも、その展開も無理があり、映画をチープにさせていた。
相手の女も軽率で、理解力が低くて無理。

ユダヤ人差別といえば、ヨーロッパで蔓延していた印象が強かったが、本作を通して、アメリカにおけるユダヤ人差別へも自分の意識が向いたのは良い収穫だった。
ヒロオさん

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