みおこし

疑惑のみおこしのレビュー・感想・評価

疑惑(1982年製作の映画)
3.7
実は大の「古畑任三郎」ファンなのですが、最近また観直してます。犯人役を務めるのが毎回大御所ばかりで本当に楽しくて、改めて昭和・平成を代表する名優さんの代表作をしっかり観ようと思えるきっかけをもらえました!ということで、桃井かおりさんと岩下志麻さんの代表作の一本であるこちらを鑑賞。

富山県で車が海に落下し、乗っていた財閥の白河は死亡するが、後妻の球磨子は軽い怪我だけで生還。彼女には前科4犯もあり、さらに白河との結婚がそもそも財産目当てであると目されていたため、これが彼の保険金3億円を巡っての意図的な殺人ではないかという疑惑がかかる。誰しもが彼女の有罪を信じる中、辣腕女性弁護士の佐原律子が球磨子の弁護を引き受けることになり...。

日本映画史に残る正真正銘の悪女、球磨子に扮する桃井さんの熱演がとにかく絶品。身勝手で強引、でもどこか愛嬌もある彼女は女性の私から見ても独特な魅力に溢れているので、男性が骨抜きにされてしまうのも正直納得...。けだるそうにタバコを吸っていたかと思うと、突然法廷で暴れ出したりととにかく掴みどころがなくて、彼女にかけられた"疑惑"が果たして真実なのか否か、どんどん分からなくなってきます。言葉巧みに男をたぶらかしてきた彼女ですが、それこそ自分の生き方だと自覚していてその信念はブレないところは、ある種カッコ良かったり(笑)。この役を演じてきた女優さんは数多くいますが、桃井さんの印象がとにかく強すぎて、これ以上のハマり役はいないのでは?
そんな球磨子を思いがけず弁護することになった律子は敏腕弁護士として活躍する、これまた球磨子とはまた違った自立した女性。白いスーツに身を包み、キリッと法廷で弁論する姿がとにかくカッコいいし、球磨子が何をやっても動じないところもまた素敵。極妻のイメージが強かったけれど、キャリアウーマンな岩下志麻さんもすごく魅力的ですね!
他にも次から次へと素晴らしい役者さんが登場するのですが、特に球磨子のヒモだった豊崎役を演じた鹿賀丈史さんが印象的でした。典型的なだめんずのチンピラ(笑)。

そんな対照的ながらもどこか共通する部分もある2人が、ぶつかり合いながらも無罪を勝ち取るべく奔走するストーリーなのですが、あの手この手で知恵を絞り、さまざまな関係者の力も借りながら汚名返上のために奮闘する過程は見応えたっぷり。法廷もので面白くない作品なんて無いけれど、本作も先が読めない展開の連続で手に汗握りました。球磨子と律子はビジネスパートナーではあるものの、決してそこに友情のようなものは芽生えることはなくて。交わす言葉も限られているのですが、それでもなんとか相反するもの同士で結託していく様子もまた興味深かったです。ラスト、すべてを終えて2人が対峙するシーンでは、律子の本音が垣間見えたなぁ...(笑)。

裁判は、かけられた疑惑の是非を問い、真実へと導く場所。でも、時にはその疑惑が最後まで解消されず、真相は闇の中...ということもあるわけで。ラストシーンの球磨子の表情を見ながら、色々考えさせれました...!
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