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イゴールの約束のRのレビュー・感想・評価

イゴールの約束(1996年製作の映画)
4.9
ベルギーへの不法入国移民に、違法の労働を斡旋したり、住居を提供して金を巻き上げたりして暮らしてるロジェのアシスタントをしてる息子のイゴール。まだ幼いのに慣れた手つきでタバコを吹かしながら、ロジェに言われるままにカネを徴収して回るイゴールは、ブルキナファソから夫と合流するためにやって来た、赤児連れの黒人の女アシタになぜか心惹かれる。イゴールに母がいないからかもしれない。ある日、突然調査員の探りが入って来たとき、移民たちに姿を隠せ!と言って回るんやけど、たまたま高所の足場で建物の修繕をしていたアシタの旦那が落下して瀕死状態に。バレたらややこしいので、ロジェはそのまま彼を死なせようとする。アシタと子どもを頼む、との男の最期のことばに、わかった、約束する、と返答するイゴールは、その後も自分のせいで人を死なせてしまったという思いを消すこのできない。そして、彼のした約束が、少しずつ確実にイゴールの人間性と人生を変えていくというストーリー。ダルデンヌの催す眠気のせいで、1回目はただぼんやりストーリーを追っただけになってしまったのだが、直後にもっかい見ると、全く違って見えてびっくりした! てか、これ普通に最低2回は見るべき映画かも。1回目ではちょっと退屈だなぁと思ってしまったとこも含め、2回目でないと気づきにくい、実は繊細かつ巧みな演出が全編に張り巡らされている。2回目は全編心わしづかみにされちゃった。特に良かったのは、イゴールの人生を自利のためにコントロールするロジェの存在から抜け出そうとする無自覚な本能的衝動と、親に対しての盲目的な従順のあいだで逡巡するイゴールが、ついに!ってシーン! マジ感動的! うおーーーーーー!!!って吼えた(2回目)! 指輪ひとつでイゴールのハートの動きを悟らせる演出もすばらしいし、イゴールが涙を流すシーンはこっちもうううううってなるし、そしてやっぱ何と言ってもラストシーン! イゴールの純粋さと、彼の背負ってしまった罪に、涙がボロボロ出た。どんな十字架を背負った人間でも、勇気を出して飛び出すことで、運命を変え、新しい未来へ踏み出せる。その感動が静かに心に染みわたる、大傑作やと思います。てかダルデンヌ、デビュー作にしてこれってやばくね? 遥かに洗練されていってる最近の作品も好きだけど、個人的にはパワフルな初期作が好き!
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