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フェリーニのローマのooospemのレビュー・感想・評価

フェリーニのローマ(1972年製作の映画)
4.0
子供同士がじゃんけんをしていて《あんたの負けよ》と言って巨大なぬいぐるみで頭を叩く、新入居者の手荷物をとりあえずチャンバラよろしく打ちのめしてピンポンダッシュ、屋外のレストランでエスカルゴを食べながら♪大変だ〜お姉ちゃんが犯された〜、と歌い出す少女、教会の中で突如ファッションショーが始まったと思ったらモデルがローラースケートで滑ってゆく、
ストーリーになんの一貫性も、もはや物語性もない、観客とのコミュニケーションなんて一ミリも考えていないだろうフェリーニの自己満足に振り回されている感がものすごい映画。それでいて大爆笑。こちらの嗜好など関係なく手放しに絶賛してしまうのだから偉大なり。

フェリーニの《サテリコン》を彷彿とさせるくるくる変わるシークエンスとどんちゃん騒ぎ、圧巻の美術、観てるだけでお腹いっぱい完全エンターテイメント。どこからともなく聞こえてくる音楽、いかにもなイタリア語と人間たちのでっぷりとした振る舞いがフェリーニらしい。

各シークエンスの基盤となっているのは、ローマにまつわるエピソードであること、それだけ。DVDジャケによると、
《少年期––––物憂い冬の日に教わった歴史上のローマ
青年期––––喧騒と猥雑のるつぼと化したローマ
現在––––長髪のヒッピー、マキシの女たちに占領されたローマ
そして、それらを皮肉った幻想のローマ》
とある。言われてみればそんな時代を感じられる気もする、そう観てみるとわけのわからぬシーンもまた面白みが増したりする。

フェリーニおなじみの、このカラッとした鑑賞後感。クセになる。
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