ボブおじさん

ダーティハリー2のボブおじさんのレビュー・感想・評価

ダーティハリー2(1973年製作の映画)
3.8
第1作のヒットを受けて2年後に製作されたこの作品は、前作が受けた諸々の批判に対してのアンサームービーとなっている。監督は同じくクリント・イーストウッドが出演を務めた「奴らを高く吊るせ!」のテッド・ポスト。

法が裁けない犯罪者たちが、白バイ警官の男たちに次々と殺される。ハリー・キャラハン刑事は同じ署で働く4人の若い白バイ警官たちを怪しいとにらむ。推測通り、社会正義を守ろうと犯行を重ねてきた4人は、ハリーに仲間にならないかと誘うが、ハリーは申し出を拒絶。警官たちはハリーの口封じのため、ハリーの相棒を殺害。自身も命を狙われ…

この若き白バイ警官たちは明らかに前作で指摘されたダーティハリーの弱点に対する身代わりだ。ハリーはマグナムで武装した白バイ集団(原題Magnum Force=マグナム軍団)とその黒幕である自分の上司を一掃するのだが、この白バイ軍団に前作で批判された〝ファシズムに直結する自警団的思想〟=〝私刑集団〟の役割を完全に背負わせてしまった。

皮肉なことに、前作でダーティーヒーローとして似たような行動を取っていたハリーが、今度は彼らを裁く側に回る。更に差別主義者であるとの批判に対応するかのように相棒は黒人刑事、恋人は日系女性としている。

その事を観客にことさらに意識させずに、さらりと描き、本筋を前作以上の勧善懲悪のアクション映画として仕上げたのは、ひとえに脚本家の手腕だろう。

このしたたかな脚本を担当したのがマイケル・チミノ。そう、後にあの名作「ディア・ハンター」を監督・製作してアカデミー賞作品賞・監督賞に輝く男だ。

個人的には前作のような〝記憶に残る〟名場面や名台詞がなく物足りなさも感じたが、白バイに乗った警官たちが犯罪者を次々に殺す導入部などは緊迫感に溢れる。前作を超えるガンアクション・カーアクションで見せ場に次ぐ見せ場は圧巻。この作品をシリーズ最高傑作にあげる人も少なくない。

一部の批評家からは、この問題のすり替えを指摘する声もあったようだが、当時のアメリカの政治不審や失業率の高さなども追い風となり、映画は前作を上回るヒットとなった。

批判すらも話題に変え、3作目では相棒を女性にするなど世間の声を味方につけてシリーズは結局5作まで作られた。さすがイーストウッド、そのくらいのタフさとしたたかさが無ければハリウッドで50年もトップは張れないのだろう。