マチュー

ラブ・アクチュアリーのマチューのレビュー・感想・評価

ラブ・アクチュアリー(2003年製作の映画)
5.0
毎年、クリスマスに『ダイ・ハード』と『ラブ・アクチュアリー』の2本立てを観る。ちょっとしたアラン・リックマン特集でもある。もちろんひとりだ。むなしい。
けれどブルース・ウィリスは毎年僕を笑わせてくれるし、ハードなアクションは色褪せない。リチャード・カーティスは無邪気で優しい筆致で泣かせてくれる。辛辣で過酷なシーンにも優しさがある。僕が本当の、骨身に沁みる優しさを感じる映画作家はリチャードとフランソワ・トリュフォーだけだ。

リチャードの映画については、その優しさゆえにかったるいとか甘いとか現実離れしてるとかいう意見があるけれど、世界からリチャードとフランソワの映画が消えたら――もし映画がダルデンヌ兄弟の『ある子供』みたいなのだけだったら、僕はとっくに首をくくってる。
でも、とにもかくにも、ありがたくも、リチャードの映画がこの世には存在している。
そしてこの夜、また僕は生き残る。人に生きる気力を与えるのが芸術の使命だとするなら、まさしく、ほかの誰かにとってはどうか知らないが少なくとも僕にとって、『ラブ・アクチュアリー』は芸術的な映画なのだ。

ところで、この映画の素晴らしさは冒頭からすでに匂いたっている。うきうきするような幕開けだ。
ヒュー・グラントのモノローグで(いきなり)ほろりとさせて、タイトルが出て、転瞬、スタジオに移る。老いたロック歌手がゴテゴテにクリスマス色に塗りかえられたかつてのヒット曲をレコーディングしている、演じるのは名優ビル・ナイだ。彼がその真価を発揮するのはリチャードの監督引退作『アバウト・タイム』においてだけれど、この映画のビルもいい。曲はビルとマネージャーの小気味のいい会話をはさんでバックミュージックだけになる。登場人物たちが紹介される。そして、曲が大きく盛り上がったところでドアが開く、キーラ・ナイトレイの完璧な笑顔がアップになる。完璧な、一瞬の、永遠の1カットだ。惚れるね。しゃくれ顔なのに美しいのは彼女とダニエル・クレイグだけなのだ。

編集の妙は映画全体に冴えわたっていて、英国式のユーモアをまじえて天使のイタズラのような悲喜劇が描かれる。

一分の隙もなくファンタスティックだ。何度も観ているのに、今年もまた泣かされてしまった。

A very merry fuckin' Christmas.