滝和也

椿三十郎の滝和也のレビュー・感想・評価

椿三十郎(1962年製作の映画)
4.3
ひたすら面白く
見せる話だから
すんなりできあがった。
黒澤明が如何に娯楽
映画の巨匠であるか、
解る後述である…。

痛快娯楽時代劇の代名詞! 

「椿三十郎」

あの男が帰ってきた!
俺の名は…椿、椿三十郎だ。もう少しで四十郎だがな(笑)

こちら用心棒の続編です。腕に覚えの素浪人、巧みな兵法を用いる三十郎の活躍を痛快に描く黒澤の娯楽時代劇の大ヒット作。こちらはやや喜劇的な要素を配し、より面白さを追求した作品ですね。

藩内の悪漢らの汚職を告発せんと立ち上がらんとする若侍たち。あまりの未熟ぶりにほっとけ無くなった三十郎。窮地に陥る彼らを兵法の限りを尽くし導きます。行く手を阻むは、仲代達矢演じる切れ者。その先に待つのは…。

若侍たちは東宝のオールスター、若大将こと加山雄三、青大将こと田中邦衛、ゴジラの平田昭彦、土屋嘉男、そして見事なコメディリリーフ振りをみせる社長シリーズ(森繁久彌の有名喜劇)の小林桂樹ら。皆さん若い!東宝の大黒柱、三船敏郎の三十郎にまさしく着いていくようなフレッシュな演技で喜劇、サスペンスを盛り上げます。

今回も三船敏郎のバッタバッタと薙ぎ倒すような殺陣は健在。二度切りの妙技を見せてくれます。更に兵法者としての切れも抜群。仲代達矢の切れ者の上を行く読み。冒頭から出し惜しみなしです。さりげないシーンですが、城代家老の奥方を逃がすシーンで馬を解き放ち、逃げる逆に走らせるあたりの兵法。後に黒澤ファンのスピルバーグがインディ3作目でオマージュを捧げてます(^^)

奥方とその娘ののんびりとした人柄がまた旨いシーンを作る辺りの脚本・演出の旨さが素晴らしい。つばきの合図や本当に良い刀は鞘に入っているのセリフはまさにそれ。三十郎のキャラを確定づけていますね。
以下ネタバレありです。



ラストはやはり名シーン中の名シーン、仲代達矢との決闘は語りグサでしょう。剣道では一足一刀の間合いと呼ばれ、相手と相対しますが、敢えて一刀の間合いで闘う。絵的にワイド画面で腰から上しか映らないショットの中に組み込まれた迫力。一瞬の達人どうしの殺陣。吹き上がる血飛沫!コレのために敢えて、ユーモアを入れてきたかの落差。これを見るだけでも意味がある!

邦画の暗さはなく、カラッとした明るさユーモア、そしてアクション作。やはり黒澤明がなんでもできる天才娯楽監督である証明となる作品。ぜひご覧いただきたいですね(^^)
滝和也

滝和也