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スール/その先は…愛のKnightsofOdessaのレビュー・感想・評価

スール/その先は…愛(1988年製作の映画)
3.5
[愛と国の破綻から希望と再生の未来へ] 70点

アルゼンチン・タンゴの神様と呼ばれるアストル・ピアソラが音楽を担当した、ピアソラ=ソラナス三部作の一篇。ソラナスは本作品でカンヌ国際映画祭監督賞を受賞していて、前作『タンゴ ガルデルの亡命』に引き続き三大映画祭での受賞となった。

元社会活動家フロレアルが5年ぶりに釈放され、夜道を彷徨う。すると、遠い昔警察に撃ち殺された友人が現れ、過去の出来事が夜の通りで起こり始める。というマジック・リアリズム的な話かと思いきや、重要な出来事のシーンはほぼ回想で片付けられていた。多分、予算の問題なんだろうけど、ちょっと残念だった。

"スール"とは"南"という意味で、フロレアルの刑務所があるパタゴニアがアルゼンチン南部にあること、南の再開発計画が理念として中心にあったこと、そして当時軍事政権が乱立していた"南米"そのものまでもを亡命者ソラナスの目線で表現した題名になっている。そして、邦題にしてはなんともカッコいい響きを持つ"その先は…愛"という副題は、逃亡生活中に妻のロシを裏切って他の女と浮気していたフロレアルと、夫を裏切ってフロレアルの仲間ロベルトと寝ていたロシという、夫婦関係の破綻に、アルゼンチンが軍事独裁政権によって破綻したのを重ね、夫婦が死者の言葉によって過去を水に流し、未来に向かって進むのを選んだのを国の未来に重ね合わせているのだ。

平たく言えば、愛の力で国を復興しようってことなのかね。なんか、ザ・ラテン系みたいな回答っすね(適当)。
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