天狗

ゆきゆきて、神軍の天狗のレビュー・感想・評価

ゆきゆきて、神軍(1987年製作の映画)
4.1
ネット上には記載が見つからないのだが、ゲゲゲの故水木しげる氏もかの戦争のときは、ニューブリテン島かどっかでかつて食べたって言うてた。

野火を観たときにも感じたことは当時の軍部の「兵站(ロジスティクス)の崩壊」であった。武器や兵隊の食事をどのように最前線に供給するのかが兵站であるが、人の肉まで喰わないと生きていけない状況、さらには、同じ部隊の若い奴から銃殺して喰わないといけなくなる状況(後者の状況についてはこの作品の中では「示唆」されるものの証言は得られずに終わっている)というのが悲惨すぎる。

さて、この作品の主人公である奥崎謙三(本人)は多少変人に見えるのだが、言っていることは至極まともなのである。絶対的正義(神による正義)のみを心情とし、当時の軍部・軍隊、戦争後の日本政府や各種法令などはそれに本当はひれ伏すべきなのだと主張する。

このような圧倒的に強靭な精神的支柱を持つ人間に対して、かつての軍隊の上官などがいかに弱い人間だったのかが作品を通じて明らかにされ続ける。

今なら「取材拒否、撮影不可」になりそうなものだが、よく作品として残せたものだと感心する。

日本にとっての貴重なアーカイヴであると確信する。
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