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鉄道員(ぽっぽや)のkuuのレビュー・感想・評価

鉄道員(ぽっぽや)(1999年製作の映画)
4.0
『鉄道員(ぽっぽや)
製作年1999年。上映時間112分。

名優・高倉健が主演を務め、共演には大竹しのぶ、広末涼子、小林稔侍、志村けん、奈良岡朋子、吉岡秀隆、安藤政信(なんか初々しい)豪華な顔ぶれが揃った。
浅田次郎の短編小説を実写映画化。
思えば短編やったんやった。
映画『あ・うん』とかの作品で高倉とタッグを組んだ降旗康男監督がメガホンをとる。

定年間際の孤独な鉄道員に訪れる小さな奇蹟を詩情豊かに描いたヒューマンプチファンタジー邦画作品。

廃線間近となった北海道のローカル線・幌舞線の終着駅で駅長を務める佐藤乙松。
今年で定年を迎える彼は、不器用なほどまっすぐに鉄道員(ぽっぽや)一筋だった自身の人生を振り返る。
幼い一人娘を亡くした日も、愛する妻を亡くした日も、乙松は休むことなくずっと駅に立ち続けた。
そんな彼の前に、ひとりの少女が現れる。愛らしい少女に、亡き娘・雪子の面影を重ねる乙松だったが。。。

Bsでやってたし再視聴しました。

原作の浅田次郎の小説は一時期は結構読み耽った。
多くが図書館から借りてきたモノだったけど、今作品の原作短編集には『ラブ・レター』『うらぼんえ』など、個人的に大好きな作品も収録されており、購入したのを覚えてます。
今短編集からの実写化には、宮沢りえ
加瀬亮の『オリヲン座からの招待状』、『ラブ・レター』は映画とテレビドラマにて実写化されてます。

今作品の実写化にあたり、キャスト特に主人公の乙松を高倉健が演じるのはどうかと思たけど、初めて観て、今は乙松は健さん以外あり得へんと思えてます。
地味やけど渋く。
誇り高く孤高。
同時に悲しくて寂しい。
禍福あざなうような乙松の人生を健さん以外に誰が出来よう。
(あくまでも個人的見解ですが)
今作品では娘さんの誕生(小生は子供もいませんし、結婚もしてませんが)が最上の喜びやったやろし、娘さんの早世は最大の悲しみやったのだろうと物語ながら何度も追体験してしまう。
娘さんへの深い思いは、思いも寄らない『再会』ってのでドラマを描き出してる。
哭けるなぁ。
なんと云っても、健さんの役柄はブレない。
健さんの生来のモノかはわからへんが、銀幕からうかがえる誠実で武骨、不器用でぶっきらぼう。
でも、根っこに優しさを秘める。
本人が生前『漫然と生きる男ではなく、一生懸命な男を演じたい』なんて語っていた通り、乙松もその路線を行く。
そんな健さんが演じる乙松の鉄道員(ぽっぽや)稼業人生には何ら欠けるところはない。
せや、乙松の人生の終着点は決して幸せに満ちてへん。
ローカル線は廃線に、愛児も愛妻もいない。
雪深い駅頭で乙松の人生は終幕へ向かう。
また、コロナ禍で急死した志村けんさんも出演してて、筑豊から北海道の炭鉱に流れてきた臨時の炭鉱マンを演じる。
奥さんと離婚し幼い息子を抱える。
駅前食堂で労組員の炭鉱マンたちともみ合いになる場面がある。
反合理化闘争をめぐって『スト破り』をなじられるその男は『最初に首切られるのはわしら臨時工やろ』と突っかかる。
他にも出演者の真摯な演技が伝わり物語を彩ってた素晴らしい作品です。
志村けんと云う喜劇人生(今作品では笑いは封印してますが、ただ酔っ払ったとこは志村けん喜劇炸裂)は忘れたくはないって思いました。
原作は浅田次郎は仕事に生きた男たちの労をたたえ、労う心が作品を通底してるって感じた一本でした。

木犀の甘い香りがただよう季節やっと秋めいてきてますが、旨いもんたらふく喰って、映画で泣き笑いして、皆さん健康に留意しませう。
皆さんが善き映画作品と出逢えること願ってます。
kuu

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