雨丘もびり

デビルズ・バックボーンの雨丘もびりのレビュー・感想・評価

デビルズ・バックボーン(2001年製作の映画)
5.0
ぎっくり腰で寝たきり療養中。ネタとヤケでセレクトして観たけど、背骨かんけーないじゃんコレ(笑)
 
"悪魔の背骨"は、二分脊椎症(にぶんせきついしょう)という病気の俗称。母体から充分に栄養供給されなかった胎児が発症する、先天性の脊椎骨形成不全障碍だそう。
満たされない故にカラダ/ココロの大切なパーツが損なわれた哀しい登場人物たち。彼らをなぞらえたタイトルというわけ。
 
スペイン内戦の渦中、カルロス少年が預けられた孤児院は不気味な場所だった。
不発弾が突き刺さった中庭、暴力的な小作人と意地悪な同窓生、不吉なことばをささやく幽霊。
不安まみれの新天地で他者に苛まれ、時にケガを負わされながらも、カルロスはこわごわ、それでも勇気を出して彼らに歩み寄り、心を通わせ、信頼を育んでゆく。
病人や死体、負の感情、気味悪い住まいに"美"を見出す試み。デルトロ流ゴシックホラー芸術。
 
【彼方を抱きしめる】
「忌避される存在への愛」はデルトロ作品に通底するテーマ。本作のお相手は地縛霊です。
身体や能力を損なったためにどこにも行くことができず、孤児院に留まるしかない者たち。
彼らに歩み寄る少年の寛容さに触れ、私たち観客は自分自身に「他人への愛とは?」と問いかけ、悩む。

□興味本位で相手に近付いていないか?
□その歩み寄り方は、相手を傷つけていないか?
□勝手な理想を抱いて近付き、反れただけで見放していないか?
□違いを違いとして受け入れる力が、私にはあるのか?

自尊心の暴走(ナチズム)が引き起こす、相手を見下してモノ化し処理する暴力的行為=戦争。
その中で、隣人の罪を代わりに償い、隣人の未練を代行して癒す主人公カルロスが、隣人たちの心を動かしてゆく。
このドラマが実に尊い。

象徴的なモティーフたちは意味深で、しかしほとんど置いてあるだけの放ったらかし。
活躍せず志半ばでリタイヤし、、ストーリー的に回収されない人物も多い。
でも、この描き方こそが本作の肝。
ハリウッド映画的な活躍をしない人/物たちを見放すことなく、気持ちを寄り添わせてゆく体験を意図した映画だから。
 
自分らしい「他者の愛し方」を己の内に見出した時、乾いた心に沁みるような感動を得られる仕掛け。
すごいねこの映画。定期的に見直そう。
自分自身を吟味して、律していかないとな。うん。

・・・しかし、デルトロの鼻血賛美は何なんかねw。
愛するものを失い、血を流してこそ一人前テキな。
初恋は先生(年上の異性)という主張も・・・ね(^^;)。
男の子っぽいバランスのテツガクにクスクスした。
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