Yoshmon

LIGHT UP NIPPON 〜日本を照らした、奇跡の花火〜のYoshmonのレビュー・感想・評価

3.8
恵比寿ソーシャル映画祭にて、鑑賞。

東日本大地震のあった2011年3月11日。それから間も無い同年8月11日に被災地10ヶ所で一斉に花火を打ち上げるために奮闘した人たちを追ったドキュメンタリー作品。

こういった形で社会にインパクトを与えようと頑張っていた人たちがいたことを知らなかった。

▪️まずは震災直後に各被災地自治体への働きかけの難しさと、その後の完遂までの過程を観た。

多くの方が命を失い、さらに消息すら不明の方達も多数ある中での花火大会を開催することに、多くの人たちが心に抱くのは不謹慎であるということ。

時期尚早だと反対する人が多い中、それでも早速前を向いている人は現地にも少なからずいるもので・・。そこから人から人へ気持ちとエネルギーが繋がっていき、日本を照らす花火が打ち上がる。

▪️そして花火大会開催にかかる必要なコストと資金集めと場所選定(花火打打ち上げと会場)。

この2011年のLight Up Nipponに必要なコストは10ヶ所トータルで4000万円。

因みに一番高い花火は直径280メートル、高度300メートルの花火で一発5万円也。

花火大会開催に奮闘する人たちの話が草の根的にいろんなところを巡り巡って、情報発信のため専用ウェブサイトも開設して、メディアにも取り上げられ、いろんな企業からの協賛金と個人からの寄付金が集まる。

ただ一点普通の花火大会と異なるのは、開催地が復旧途中の被災地であることから瓦礫が腐ってメタンガスが発生するため花火を打ち上げる場所も厳選する必要があるところ。

▪️アウトプット
結果として、
2011年8月11日に10拠点で上がった花火は23,400発、
来場者数42,000人、
集まった資金は企業と個人からそれぞれ2650万円と4720万円。

何よりすごいのは活動が「継続」されていることで、他の地域へも広がり毎年東北のみならず日本各地でもLight Upされ日本に新たな祭り文化が根付きつつあること。

花火大会は夏の夜空に咲く花火の美しさを愉しむひとときだけれど、隅田川花火大会では疫病と飢饉が起源となっているように、本来の目的は魂の鎮魂と精霊送りにあり、それを再度認識するきっかけにもなってくれている。

***
恵比寿ソーシャル映画祭では鑑賞後のトークイベントとしてLight Up Nipponの活動に当初より携わっている当事者の方の話を生で聴く機会があって興味深かった。

作中に映し出される姿からも直に聴く話からも感じる点は、発起人となった博報堂に勤める人や、その周囲にいる高学歴の人たちが勤めるような企業に身を置く友人知人の仕事ぶりには目を見張る。

人脈、コミュニケーション、基礎学力、論理的思考力 等々、
彼らの普段の能力とパフォーマンスは純粋に尊敬する一方、人間の徳の側面で偏見を持っているのが正直なところだった笑。けど、この作品で取り上げられている活動に関わる人たちに関して言えば、彼らの能力を公の利益のために駆使しているあたり、僕の偏見は間違いである。

イベントの企画運営や広告代理店のキャリアに興味がある人には特に有益なドキュメンタリー。
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