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マシンガン・パニックのsleepyのレビュー・感想・評価

マシンガン・パニック(1973年製作の映画)
4.0
疲れた男達と猥雑なサンフランシスコ

冬でもないのに冷え冷えとした空気が全編に流れる。対外的にも対内的にも荒廃して疲れていた70年代半ばの大都市、サンフランシスコの風俗・空気・街並みの捉え方に唸る1本。そして刑事たちのなんとくたびれて苛立っていること。現実の刑事はもっと大変だろうけど、実感が本作にはある。本作はアクションでもパニックものでも(犯人はこの中の誰かというような)推理ものでもなく、社会派でもなく、ひたすら地味に犯人へ迫る刑事たちを追う。しかし中盤に銃撃戦はあり、冒頭の路線バスでのマスカー、ラスト近くは、さすがスチュアート・ローゼンバーグ監督(「暴力脱獄」等)らしき迫真性と凄みがある。

すえたような、乾いたような不思議な匂いが、ざらりとした手触りがちゃんと感じられる。眩しい昼の陽光と冴え冴えとした夜の蛍光灯の捉えたデヴィッド・M・ウォルシュの光繊細なカメラ、的確な構図。やや中盤停滞するものの、近時の活劇の定番となった感のある、フラッシュ暗算のようなごまかしはない。

疲れているが熱いものを抱えたウォルター・マッソーと、いつも小ばかにされる小物ぶりのブルース・ダーンに体臭があって良い。かつ助演陣のみなに現実味がある。素人エキストラも混じっているのだろうと推測する。なくてもいいようなシーンが多いが、これが映画に生気を与える。やや主人公2人への踏込加減が怪しいけれども、筋に直接関係することだけが繋ぎ合わされたような現在の聖林映画にこの味わいは乏しい。本作は筋よりもその空気や感触をより楽しむ映画と言える。

ラストにかけてスリルが急上昇。再び白昼に惨劇は繰り返されるのか。そして猥雑なサンフランシスコが主役の街の映画ともいえる。しかし「めまい」のようではなく、荒んではいるが猥雑なパワーがふつふつと湧いているような堕落の街として。ローゼンバーグには傑作「暴力脱獄」があるが、本作始め「悪の華」とか「新・動く標的」とかもっと評価されていい。ジャック・スマイトやジョセフ・サージェントと並んで裏・70年代米娯楽監督のひとり。

★オリジナルデータ:
Laughing Policeman, US, 1973, 製作・配給20世紀フォックス, 112min. カラー、オリジナル・アスペクト比(もちろん劇場上映時比のこと)1.85:1 Spherical, Mono、ネガ、ポジ、ポジともに35mm
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