回想シーンでご飯3杯いける

きょうのできごと a day on the planetの回想シーンでご飯3杯いけるのレビュー・感想・評価

3.9
京都、大阪を舞台に、8人の若者の日常を描いた群像劇。

彼等の何気ないやりとりから滲み出る心情、夢、恋。決して泣きのシーンや感動のシーンがあるわけではなく、ただひたすら淡々と物語は進んで行く。

原作は大阪出身の女性作家、柴崎友香さん。これを行定勲監督がジム・ジャームッシュを思わせるこだわり溢れる演出で映像化。原作には登場しなかった「壁に挟まれた人」、「くじら」も登場し、日常描写に独特の距離感、世界観を加える事に成功している。鴨川、高槻サービスエリア、天王寺動物園(実際のロケ地は王子動物園)など、関西人におなじみの光景が出てくるのも嬉しいし、俳優達の関西弁も上手い。何気ない台詞に表れる関西人気質にもニヤリ。特に僕がお気に入りなのがメタリカのTシャツを着た大学生、西山のキャラ。「正道の家は、二階建てやでぇ~」という鼻歌が、月亭可朝 “嘆きのボイン”の替え歌だと気づいた時の嬉しさよ。

人には各々の日常があり、なにげない時間の経過の中にも、様々な感情や因果関係がある。何の変哲も無いようで無限の可能性を秘めたヒトコマ、ヒトコマは、淡々としていながら、その人、その人にとってかけがえのないものだ。この何とも言えない気持ちを、さりげなくもキラリと光る脚本、演出で映像化した本作もまた、とてつもなく愛おしい。