Yoko

ホーリー・マウンテンのYokoのレビュー・感想・評価

ホーリー・マウンテン(1973年製作の映画)
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 不老不死を得るべく賢者が住むといわれる「ホーリー・マウンテン」へ向かう錬金術師、そして彼に従う9人の弟子の物語。

 なんて残酷な映画なのだろうか。
 今現実に住んでいる世界の常識を超えた世界(おそらくこの世界には「障害」という概念がない。神への「信仰」すら消えたのか?)をこれでもかと提示する前半部(当然、「害」を「がい」と表記するといった、もはや誰に向けたか分からない気遣いすらも必要としない世界でもあるでしょう)。
そして、ようやく「不老不死を得る」という目的意識を作品が帯び始めた後半。
前半部において、眠気と作品に対する没入感と似たまどろみを右往左往しつつ、後半部においてようやくまどろみが脳内を占めてきたところであんな終わり方をしてくれるなんて!なんていやらしい映画だろうか。
 内容について詳らかに感想を書くことが、なにかこの作品を掴んだ気になってしまいそうなことが一抹の懸念。であるために、色彩や音楽、造形の類をこれでもかと堪能できた作品の感想としてそうした手段は不適切でしょう。

 しかし、今作の初体験をHDリマスター版で堪能できたことはは至上の幸運だったことは満を持して述べることができる。DVD特典の比較映像を観てこれほど端正な画に仕上がるのかと感服してしまった。
美しく仕上がることで見やすくなっている反面、リマスターにはオリジナルという原体験を自ずと希釈してしまう働きがあるイメージを持っていために訝しげに見ることが多かったが、今作を以てリマスターの魅力を初めて実感できた作品でもあった。

 ある奇特な考えの持ち主の頭の中を見てみたいという言葉の綾がありますが、ホドロフスキーの頭の中を見てもどうすることもできないでしょう。ただ、自分でもどことも知れぬ部分で彼の作品に惹かれてしまう怖ろしさが万人を魅了するのではないでしょうか。
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