エリオット

十字路のエリオットのレビュー・感想・評価

十字路(1928年製作の映画)
4.1
「時代劇が前衛だった-牧野省三、衣笠貞之助、伊藤大輔、伊丹万作、山中貞雄」という本が最近発売されていて濱口竜介監督の帯につられて読んでみたら面白かった。
そして、たまたまこの本に出てくる作品の特集上映が行われるとのことで、その中の1本である衣笠貞之助監督の1928年製作の本作を生ピアノ演奏付きで鑑賞。

内容は、時代劇と言ってもいわゆるチャンバラではなく、不幸な境遇の兄妹にさらなる不幸が追い打ちをかけるこの世の不条理を描いたもの。
家のふすまが渦巻き模様だったり、画面いっぱいにデッカイ提灯がぐるぐる回り続けていたりといったドイツ表現派風のセットのなか、登場人物の苦悶や悲嘆の表情をググっとアップで捉えるショットが印象的に挿入されるなど確かに前衛的。

監督は本作を実際に手にもって渡欧し、モスクワでエイゼンシュテインと歓談したり、ベルリンでラングの撮影現場を見学したりしたらしく、作品も評判で現地の俳優たちと映画を撮る寸前までいったとのこと。

本作の2年前に撮影された「狂った一頁」(現在アマプラで見ることができる)はもっと前衛的とのことで戦前の京都の監督たちのチャレンジ精神と才能に驚く。
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