こたつむり

ニューヨーク1997のこたつむりのレビュー・感想・評価

ニューヨーク1997(1981年製作の映画)
2.5
想像力を刺激する"素材"としては最高級の作品。

犯罪率の高止まりが続く近未来。
街ごと刑務所として閉鎖されたニューヨーク。
そこは圧倒的な暴力が支配し、強者だけが生き延びる世界。

…何とも想像力を刺激する舞台設定です。

だから、本作が。
様々な作品に影響を与えた…というのも頷ける話。何しろ場所は制限されても、物語の展開には制限がありませんからね。創作者の想像力次第で多様なドラマを描くことが可能な設定なのです。ちなみに日本で“隔離された街”というと、菊池秀行氏の小説『魔界都市《新宿》』を連想しますね。あれもなかなか魅力的な作品でした。

というわけで。
物語冒頭、舞台設定の説明を受けた時点で。
ムクムクと期待が膨れ上がるのも当然の話。
しかも、序盤から映像全般的に暗くて、退廃した雰囲気に満ちているのです。「これは傑作かも!」なんて、かなり鼻息荒く観賞したのですが…。

…あー。
本作が“B級”と称されているのは。
映像表現が陳腐だからではなく。
設定を上手く活かしていない脚本の所為だったのですねえ。特に人物造形については、外見は格好良いものの内面描写が疎かになっているので、行動原理からして理解できない始末。せめて、もう少し肉付けが欲しかったです。

ただ、考えようによっては。
あくまでも製作者が提供するのは素材のみで、面白くするかしないかは観客に委ねられている…のかも。だから、好みの味付けを自分で施せば…楽しめたのかもしれません。

そういう意味では。
若いうちに観賞したほうが良いのでしょうね。
何しろ食事量が減るような年頃だと、生のままだと消化できないし、自分で調理するのも億劫になったりするのです。とは言っても、咀嚼するのが楽だと「味気ないなあ」なんて贅沢を言ったりするのですが…。はは。我ながら手に負えませんな。

まあ、そんなわけで。
大槻ケンヂ氏の小説にも名前が出ていた作品なので、かなり期待していたのですが…残念でした。想像力は十二分に刺激されるのですけどね…。ちなみに本作がカーペンター監督作品鑑賞二本目。他の作品も同じような味付けなのでしょうか…。
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