敬愛している監督の一人なのに未だに作品について触れて来なかったが、ようやくヴィクトル・シェストレムのこの名作に関して記してみる。
序盤から病床の女性とか馬車に乗った死神等といった後のベルイマンに影響を与えていると思われるシーンが散見されるのが興味深いだけでなく、構図も見事に決まった箇所ばかりだから見る度にスウェーデン最古の巨匠は伊達でないと思い知らされる。
露光を用いた心霊描写もかなり精確で、ここまで目を見張る露光表現は他に無いのではと思うくらい素晴らしい。
話にもロシア文学的な深みが感じられるし、それでいて言葉は展開を補足する程度に最小限で抑えて殆ど動きや表情でしっかり伝えられているのも秀逸で、まさにサイレントの傑作古典として未来永劫語り継がれるべき作品の一つだ。
ところで当時既にサイレントの傑作として有名だったとはいえ、この作品を参考にしてシャイニングのあの名シーンを生み出したキューブリックは流石のセンスをしている。