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霊魂の不滅のKnightsofOdessaのレビュー・感想・評価

霊魂の不滅(1920年製作の映画)
4.0
No.11[圧倒的な映像美を誇る『クリスマスキャロル』的"悔い改める男"の旅路] 80点

シェストレムは「Ingeborg Holm」以来二回目なのだが、このふたつは彼の作品群でも特異らしい(そういうのだけ拾って見ちゃうのが非線形天邪鬼)。本作品は彼のサイレント期の代表的傑作であり"冷酷な社会に拒絶される人々とその蛮行の行く末"がテーマとされているが、どうも"キリスト教的な許しと改心"という方が大きい気がする。

大晦日、救世軍のシスターであるエディトは病床に伏している。彼女はデヴィッド・ホルムという酒浸りの男を呼び寄せようとするが彼は見つからない。デヴィッドは墓場で仲間と酒を飲んでおり、昨年の大晦日に亡くなったジョルジュという男が話していた"大晦日の夜に死んだ罪人は次の一年間死神の馬車の馭者を務めなければならない"という話を聞く。そこへエディトの遣いが彼女の元へ行くよう促すがデヴィッドは断り、それが原因で仲間と喧嘩になり亡くなる。デヴィッドが気がつくと、そこには死神の馭者となったジョルジュがおり、彼が人生でどれだけ他人を顧みなかったか糾弾する。弟と製材加工場で働いていたものの酒浸りになってからは悪い仲間も増え、自身の収監中に弟は殺人犯になり、釈放後には妻と子供に逃げられたため再び酒に浸り始め、彼らを探す旅の途中で出会った救世軍のエディトには恩を仇以上で返し、やがて彼女のおかげで妻を見つけるも再び酒によって迷惑をかける。死んだ彼はエディトや妻のもとに連れて行かれ、彼女たちの現在置かれた状況を確認する。エディトは死ぬ前にデヴィッドと会うことを望むが、死神は拒絶し"別の者が来る"と後にする。妻は子供たちとともに服毒自殺を企てようとしており、改心したデヴィッドが生き返ることで止めることに成功する。

本作品の最も特徴的なシーンは二重露光で撮影された死神の馬車であり、挿入された回想物語である。悪人が悔い改めるという、まんま『クリスマス・キャロル』的なプロットではあるものの、上記の特異性により普遍性を勝ち得た稀有な作品である。

主人公デヴィッド・ホルムを演じるのはシェストレム本人であり、その妻を演じるのは「Ingeborg Holm」で発狂したインゲボルイ役のヒルダ・ボルグストレム。シェストレム的にも挑戦的な社会派映画「Ingeborg Holm」を継承した映画ということにしたかったのだろう。

にしても"別の者が来る"は映画史屈指の名言でしょ。死んでも言われたくないわ。
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