Ayakashd

ナイロビの蜂のAyakashdのレビュー・感想・評価

ナイロビの蜂(2005年製作の映画)
3.8
ルカレ原作の未視聴作品2本目。
なんて悲しい物語なんだ。
ルカレらしい悲しさと遣る瀬なさの極致の幕切れ。そしてきっと原作ではエピローグ、後日談の挿話だったであろう、僅かな救い。製薬業界の闇の深さはルカレを持ってして「現実に比べればわたしの物語など絵葉書のようなものだ」と言わせたという。ああ、恐ろしい。

レイチェル・ワイズの意志の強さとレイフ・ファインズの慎ましさがなんとも微笑ましく、それが切ない。二人とも素晴らしい役者だなぁ本当に。官僚連中の平凡な毒々しさもまた良かった。

アフリカの乾いた、色とりどりの風景が、アフリカの国々の現実の激しさを際立てていた。熱気、匂い、喧騒。死、病、貧しさ。軽んじられる命。「英国の旦那」はただ英国に生まれただけであなた方の何十倍も豊かなんだよ。あなたたちと何も相違ない、生まれた国が違うだけなのよ。ジャスティンの車に駆け寄る子供達を見て激しくそう思った。

物語の進みは、映画としては十分だったと思うが、ルカレにしてはやや単純に感じられたので、裏切りのサーカス然り、ルカレの映画化は大変難易度が高いのだろう。ドラマならいいのかもなぁ。リトルドラマーガール観たいわー。
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