元レンタル担当

殺人の追憶の元レンタル担当のレビュー・感想・評価

殺人の追憶(2003年製作の映画)
4.7
リアル韓国版『SE7EN』
【閉鎖的な舞台が事実を霞ませる風刺劇
そして、無慈悲なまでに淡々と過ぎて行く
      リアル
     “現 実”
          という2文字】

これはまた…すごい作品を魅せられた。
ポン・ジュノ作品を鑑賞したのは
『パラサイト 半地下の家族』以来、2作目。

本作『殺人の追憶』は…
韓国で実際に起こった三大未解決事件の1つ
“華城連続殺人事件”をモチーフにしている。
前提としてフィクション要素+実録的な要素が反映されていることから我々は物語の結末を理解しているというていで当時の韓国警察の報われない捜査実態を目の当たりにする。

最大の焦点となるのは…
《この映画が公開された2003年当時、犯人はまだ逮捕されていないということ》
観客が画面越しに映画を追体験することでより多くの人に事件のことを認識してもらうことである。
国内での評価は2003年の韓国映画賞で最優秀作品賞を受賞し、510万人以上を動員した。
結果、
“華城連続殺人事件”に対する関心は多くの観客に伝播する状況を生み出し、事件への風化を防ぐ役目となった。

さらに、連続殺人犯の特徴として誇示的な性格を示す傾向がみられる。
そこに着目したポン・ジュノは
犯人の性格を逆手にとり、この映画を観るように誘導した。

ラストの印象的な
スクリーンのこちら側を睨みつけるソン・ガンホの形相が脳裏に焼きついたことだろう。
ソン・ガンホをはじめ、少なくとも“510万人以上の視線が監視しているぞ”という犯人に忠告している。
ある意味、犯人に対する抑止力となる作品となっただろう…。

後日談として
犯人が刑務所でこの映画を観たというのは有名な話である。
ポン・ジュノの意図していたシナリオが現実となったということだ。
正直、ポン・ジュノがどこまで予見していたのかなんて凡人の私には分からない。

鬼才の産声はこの作品から上がったように思う…。
それに感化されるかのように、
近年、韓国作品がエンタメ業界に空前のブームを巻き起こしている。
その“先駆け”的な存在となった本作は…
個人的に間違いなく『パラサイト』を上回るポン・ジュノ作品史上NO.1となったし、韓国映画史上最高傑作…と言っても過言ではなかろうか?
私の中で韓国作品の概念を変えざるを得ない。まだまだ未開拓の韓国ジャンルをさらに開拓してみたいという気持ちに駆り立てられる。


あの時もこんな土や草木が濡れ冷やされていくときの匂いがしたっけ?

そうだ…じめじめした秋雨が降る夜だった

雨が立場も良心も理性も何もかも洗い流してくれた

今日は誰の番だ?

ただ、目の前の赤色が俺を本能的にさせる

目を閉じると

何度も何度も何度も何度も何度も……………

あの光景がフラッシュバックする

あー今でも俺は焦がれている…
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