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殺人の追憶のマーチのレビュー・感想・評価

殺人の追憶(2003年製作の映画)
4.5
《韓国映画 怒濤の10本レビュー:後半戦》
今年鑑賞した韓国映画10本を寸評で一気に投稿しました。
度々の連続投稿失礼いたしました!
今年だけでかなり韓国映画にハマった気がします。特に今年日本公開された三巨頭(哭声・お嬢さん・アシュラ)の功績のおかげだと思います。
面白い韓国映画あったら是非教えて下さいね♪


【下半期鑑賞映画寸評:2017】

➓『殺人の追憶』
《何が違う?どこで間違えた?
お前は今、どこなんだ…》

ある乾いた湿度の低い夏の日に女性の遺体が見つかったことに端を発して始まる捜査は警察の無能さを浮き彫りにし、やり切れない強烈なラストへと辿り着く。

どんな役柄を演じさせてもお釣りが帰ってくるほどの演技力で役にピッタリとハマり、その役柄の人にしか見えないくらい徹底して演じ切る素晴らしいカメレオン俳優ソン・ガンホが今作で演じる怠惰な田舎の刑事は、何でもありで容疑者をしょっ引く。

それとは対照的にキム・サンギョン演じるソウルから派遣されたエリート刑事は、着実に証拠や根拠を重ねた上で推理し、着実に犯人に近づいていく。

まずこの二人の刑事がバディとして完全に正反対の性格なので凸凹具合が面白いし、始めはユーモアを交えながら展開していた二人の関係性がある一点を境に入れ替わり、凸凹どころか二人三脚で協調し合って真実を求め、犯人を捕まえる為に全力を尽くす様子に熱くなる! 正反対が最良のバディになるという鉄板展開でありながら此処まで熱くなれるのは、二人の演技が作品の方向性と合致したからであり、歪み合ったり適当にやっていた片割れが本当の意味でトンデモない事件なのではないかと漸く自覚し、本来持ち合わせていた刑事としての能力が引き出されたからに他ならないだろう。とにかくこのバディでないと成り立つことは無かった作品なのである。

個人的にはハンディキャップを背負った若者を演じていたパク・ノシクさんがまた良い味を出していたと思う。前半から中盤にかけて容疑者として滅茶苦茶な扱いを刑事から受けてしまうのだけれど、後半彼がこの役柄である意味が痛烈に響き、作品に革命を起こすから凄い。彼の演技力の賜物で、それが違和感無く観れるから恐ろしい限り。

韓国の実在の事件を扱った作品はトリッキーで悲惨過ぎる。(まあ、そこがいいんだけど。笑) 今回は戯曲を原作として映画化されているので実際の事件に比べるとかなり脚色されているようだけど、だとしても纏め方や締め方が秀逸で傑作と言われているのも納得の出来栄え。
様々な残酷に感じる描写もあるし、あと一歩、あと少しで真相を掴めたという無念さもあって、非常に心に鬱屈としたものが残る作品ではあるけれど、この事件を乗り越えた彼ら(この事件に関わった)刑事たちの人生が180度変わり、二度と同じ過ちを繰り返すまいと誠実に捜査に打ち込むようになったであろう未来が眼に浮かぶ。そういう意味では前半の無能警察🚓描写がかなり効いてくるし、成長譚として想像の余地がある余韻も残している。ソン・ガンホは刑事辞めてましたけどね…笑 それはそれで成長したってことでしょう!笑

ラストに雨降りしきる中☔️展開された3人の顔面演技合戦は、切なく重厚なメロディと共に信じられない現実を突きつけてくる…そしてあの衝撃のラスト、まだそんなものをぶち込んでくるのかということとストーリーの奥深さに思わず頭を抱えました。笑

ある湿度の低い夏の日に端を発して幕を開けたこの事件は、作品として徐々に徐々に湿度を高め、ジメジメしたままイヤ〜な感じで終わりを迎える。(鑑賞後に感じる)さながら雨上がり後の快晴のようなジメッとした気持ちの悪さは、この作品の凄さを物語っている。


【p.s.】
下半期に突入しましたが、上半期鑑賞映画のレビューをまだ消化しきれていないため、下半期鑑賞映画も一部は寸評で投稿していきます。

いつもとは違い、極々短いレビューで投稿しています。暇があれば付け加える予定です。

従って、いつもの【映画情報】等もカットさせていただきます。

*詳しくは2017年7月3日に投稿している《『ローン・サバイバー』評》内の【p.s.】をご参照下さい。
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