ギルド

殺人の追憶のギルドのレビュー・感想・評価

殺人の追憶(2003年製作の映画)
3.8
やるせないけど、同時に笑える不思議な映画でした。この前のオクジャもそうでしたが、ポン・ジュノ監督は異なるトーンを喧嘩せずに組み合わせるのが秀逸だね。ソン・ガンホの演技/役作りはいつも通り良いけど、それ以上に全編通じて興味深い展開や見せ所が張り巡らされ、かつ事件性をなぞらえたギミックも搭載されていて満足度の高い一作かな。

 華城連続殺人事件という実際の未解決殺人事件を題材にした映画で、犯人を追う刑事のドラマだけどジャンルが付けづらくサスペンスものとしてはやや変則的だと思う。
その上でこの映画の一番良いなと思ったのはストーリーの結ばれ方と円環構造で、これも華城連続殺人事件とこの映画の関係性を踏まえるとそこはかとなく監督の強い想いが伝わるのは見事でした!
だけれども、そこだけではなく戦略の交錯 / 心理的駆け引きの変化 / シリアスだけど間抜けで笑えるエンタメ性の高さと当時の韓国の現状を映した社会性を両立していてそこも良かった!(特にクァンホと刑事が焼きそばを食べるシーンの生暖かさ、クァンホ父が経営する焼肉屋でプレゼントを受け取るシーンが可愛くて笑えました)

 映画の作りも凝られていて、分析をして事件を解く刑事が放った一言が実は終盤で・・・とか対照的な刑事の一癖と終盤で起こる結末の皮肉さ・・・とか残酷な出来事をストレートに伝えるのではなく傍観者のトラウマと準える・・・など、1個1個のシーンが見終わった後により印象的に仕上がる仕掛けが散りばめられていて、そこも含めて見応えのある作品で良かったです!

 個人的には華城連続殺人事件の結末で先読みしやすいのと、トリックの捻りが特になくてサスペンスとしての面白さがあまりなくて、そこで物足りなさを感じたかな・・・
でも社会性に焦点を当てたのとお堅い作品ではないエンタメ性を両立した狙いが良くて、変わったサスペンスが見たい人は気に入る作品だと思います。
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