Kuuta

殺人の追憶のKuutaのレビュー・感想・評価

殺人の追憶(2003年製作の映画)
3.9
ポンジュノ少しずつ見ていこうと思う。今更ながら面白かった。
実在の未解決連続殺人事件を題材にしたミステリー。多少の改変があるとはいえ、ノンフィクションベースとは思えないほどお話として綺麗にまとまっている。

暴力に頼りがちな田舎のパク刑事(ソン・ガンホ)とソウルから来た知的なソ刑事(キム・サンギョン)の凸凹コンビが、それぞれの捜査手法で真相に迫るが…。

ソ刑事かっけー。ハガキから犯人の居場所を調べたり、頭を使った捜査を進めるが、次第に追い詰められていく。見ている側としても、彼が最後に暴力に走るのも納得できるくらいのキツイ追い込み方をしている。

演出と編集が特に印象に残った。
異なる場面の繋ぎ方。遺体からの焼肉。「自信はあるか」と聞かれた次のシーンで、機動隊を一瞬見せずに「あれ?」と思わせる。つんつるてんからの銭湯…などなど。

自分は霊媒師みたいなもんと言っときながら霊媒師に頼る。絆創膏の見せ方、シンドラーのリストの少女のようなゾッとする演出だった。画面に赤が出てくるだけで嫌な感じ。夜道の口笛怖過ぎ。囮捜査の場面は古典的なスプラッターホラーっぽく撮っている。現場に現れた男の追跡シーン、村を知っているパク刑事が、観察眼においてはソ刑事よりも優れていると示す。

主観と客観のショットを織り交ぜ、混乱した時代の中で真実が掴めないもどかしさを描く。灯火管制が敷かれるほど国が不安定だったため、警察が殺人事件に腰を据えられなかった事情が透けて見える。取り調べの酷さはもちろん、DNAも最新技術で再鑑定したらどんな結果が出るのだろうか。

文字通り「足で稼ぐ」乱暴なチョ・ヨング(キム・テハ)の軍靴が招いた因果応報。目撃者グァンホ(パク・ノシク)が焼肉屋から逃げたのは警察に拷問された記憶があったからだろう。唯一状況を俯瞰するグァンホ(実際電柱の上から話す)が写真を見て「熱かった」と言うのは、過去の虐待の記憶がフラッシュバックしたからか。男の顔を見て恐怖が蘇る→写真の男が犯人?最後の犯行でターゲットが20代でも、雨の日でもなくなり「普通の事件」になってしまう。八方塞がり感が重苦しい。

「書類は嘘を付かない」が信条のソ刑事が、最後に受け取る書類。事件を象徴する雨の中を立ちつくす刑事2人に対し、カメラが切り返すと容疑者の側には雨が降っていない。代わりにその背後には、トンネルの真っ暗闇が伸びている。

未解決事件を扱った映画の終わらせ方は難しいと思うが(フィンチャーのゾディアックも苦労していた印象)、今作のエンディングは素晴らしい。

作中何度かマスコミの記者が出てくるが、監督は映画を使って、今も逃げている犯人に呼び掛けようとしているのだろう。用水路という「四角い枠」=カメラの先に視線が向けられている。

観客に対しても、冒頭の少年や、グァンホ、唯一の女性警官ギオク(コ・ソヒ)のように、意外な人物が稲穂に紛れたバッタを見抜く目を持っているのかもしれない、手掛かりを知る人はいないか、と訴えている。この終わり方、韓国の映画館で見たらより不気味に感じたに違いない。78点。