みーちゃん

殺人の追憶のみーちゃんのレビュー・感想・評価

殺人の追憶(2003年製作の映画)
4.2
ポン・ジュノ監督の作品を初めて観た。
事件やあらすじには触れないが、中盤までは想定内の面白さ&不快感だった。どこかしら観客を突き放すような描き方の気がして、私も距離感を保ちながら観ていた。

でも明確に変わった瞬間が。それは最後から2人目の被害者が水溜りの脇のような場所で発見されるシーン。思わず身を乗り出した。なぜなら、それまでの被害者達は無残ながらどこかマネキンのように無機質だったのに、急に体温というか艶というか、さっきまで生きていたことがリアルに伝わってきた。明らかに描写に変化があったと思う。

ここから一気に引き寄せられ、ソン・ガンホやキム・サンギョン達と一緒に全力疾走しているような一体感と展開を味わった。勿論、偶然ではなく、ポン・ジュノ監督の技術と計算による必然。

それだけに最後の犯行現場は辛かった。残忍、残酷というのとは少し違う。あまりの不条理と、見ているのに止められない自分の無力さ、捕まえたいのに正体が分からない無念さに涙が出た。お前も刑事か!と、自分で自分につっこむほどだった。アングルのせい?いずれにせよ観客を巻き込む技が発揮されていた。

一体何が間違っていたのか?どうすればよかったのか?言葉にならない感情を彼らと共有し、最後の瞬間まで心を掴まれた。