恭介

トラフィックの恭介のレビュー・感想・評価

トラフィック(2000年製作の映画)
3.9
●レンタル屋閉店20分前に行って
直感で今観たい10本借りてみたシリーズ①

旧作コーナーから鑑賞済みで
もう一度観たいっ!と思った作品を
閉店までに10本選べるかっ

なんて無意味なチャレンジをして
しっかり10本借りてきた。
なかなかの節操のなさが浮き彫りに
なって自分で笑けてきた(笑)

で、ひっさしぶりに本作。
スティーブン・ソダーバーグ監督が
ノリに乗ってた頃の監督作。

まず、キャノンボールかアガサミステリー
作品かと思うぐらいの豪華キャスト。
オーシャンズシリーズと同じ感じで
誰もがクセのある芸達者な役者さん
ばかりで、それだけでも魅入ってしまう。


そんな役者さん達を得て、監督が
思い切り拘りを詰め込んだ見応えある
群像劇ドラマに仕上がっており
最後まで釘付けになる。

ネタバレあり。







ストーリーの軸となっているのは
麻薬だ。

麻薬を軸に3つの物語を
並行して描いているため、予備知識なしで鑑賞を始めると面食らうかも。

ただ、それぞれのストーリーを
分かりやすくする為か、色彩を
極端に変えて区別化してくれている
ので、混乱する事はないかと。
あからさまに分かりやすい違いなんで
この演出を安易ととるか、上手いっ!
ととるかは評価が分かれるところ。

ベニチオ・デル・トロが牽引する
メキシコ麻薬捜査編がコントラストが激しい黄色味がかった色彩。

マイケル・ダグラスが牽引する
蝕まれるアメリカ編は青みがかった色彩。

当時、マイケル・ダグラスとの間に
出来た赤ちゃんを身ごもって、リアル
マタニティ姿で熱演したキャサリン・
ゼダ・ジョーンズとドン・チードルが
牽引するアメリカ麻薬捜査編は色彩豊かで
コントラスト強めな色彩。

この全く違う場所で進行する3つの
物語がラストに向けて
徐々に徐々に交錯していく過程は
かなり見応えある。

麻薬を売る側、溺れる側、捜査する側と
三者三様のドラマを違和感なく
束ねていく手腕はさすがソダーバーグ。

いつもの様に仮名で撮影監督も
兼任して、手持ちカメラでの臨場感と
リアリティを重視した演出も効果的だ。
チョイチョイ挟むジャンプカットすら
嫌味ではない。

と、作品に浸っていたが途中から
デル・トロの役柄にデジャヴ感が。

今回久しぶりに見直してみて
面白い発見というか・・

本作のデル・トロの役柄。
ボーダーラインのシカリオの役柄に
繋げられる(笑)
まさにシカリオのオリジン的な役柄だ。

本作を観た後にボーダーラインを
観ると違和感なく入り込めるはず。

本作では、若く薄給のしがないイチ警官。
しかし人情味に溢れ、本気で
麻薬に染まっていくメキシコの人々を
案じている。

彼はアメリカの麻薬捜査局、DEAから
情報提供の取り引きを持ち掛けられる。

情報を提供する見返りが欲しいだろ?
幾ら欲しい?
DEAの捜査官に問われるデル・トロ。

金は要らない。
代わりに夜間照明がついた公園を
作ってくれ。みんな野球が好きだ。
野球が出来れば子供は麻薬なんかに手を
出さない。

麻薬を憎み、それによって
子供達の未来が奪われていく現状を
案じている若い警察官。
汚職や買収が横行しているメキシコの
警察の中で、一切関わりをもたない
正義感を持つ彼。

その後、彼はメキメキと頭角を
表し、メキシコで検事にまで上り詰める。
麻薬カルテルと臆する事なく戦い続けた
ある日、愛する妻と娘がカルテルに・・

みたいな感じで違和感なく
ボーダーラインに繋がる。

もちろん、こじ付けだが
久しぶりに旧作を観返すと、色んな
楽しみ方が出来る。

ラスト、3つのストーリーが
収束を迎える。バラバラで始まり
繋がり、そして3つの結末へ。
それぞれが希望に満ちた終わり方なのも
余韻としては心地よい。

黄色いメキシコのラストは
照明に照らされた夜の公園で
子供たちが野球をしている
のを嬉しそうに観戦するデル・トロ。

今なお続く麻薬カルテルとの
戦争をひと時でも忘れさせてくれる
粋なラストだ。

まだ未見の方はこのトラフィックを
鑑賞してからボーダーラインを
観て欲しい。なんとなくシックリくる
はず(笑)
恭介

恭介