ちろる

マンデラの名もなき看守のちろるのレビュー・感想・評価

マンデラの名もなき看守(2007年製作の映画)
3.8
欲しいのはただ、平等な社会だけ・・・

南アフリカのアパルトヘイト政策に対して人種への平等を訴え続けたネルソン・マンデラ元大統領。

囚われ続けた彼の27年間の刑務所生活の中で出会ったとある白人看守との交流について描いたこちらの作品。

物語はこの白人看守グレゴリーの視点から描かれていたが、そのおかげかより一層ネルソン・マンデラという人物のただならぬ存在感が伝わる。
自分の子供達にあたかも「黒人=犯罪者」のような説明をする偏った考え方のグレゴリーが、その自らの立場に悩むきっかけになるのは、監視することになったマンデラのオーラと、彼の説得力のある言葉たち。
そして、囚人と看守という関係でありながらもスパイの立場を言い渡されている看守のグレゴリーが、上からの使命に反してマンデラを敬服するようになってしまうのである。

家族を良い生活をさせるために上からの命令に従い、その一方で誇り高きマンデラの姿勢に共感するジレンマで苦しむ。

1人の男として、家族を愛する男として組織にたてつくことを躊躇い、しかし子供を持つ父親として、白人至上主義の歪んだ価値観を積み重ねることに耐えられなくなる。

実際のグレゴリーの家族が、どうだったのかは分からないけれど、
「黒人はテロリストで白人の住むところを奪ういけない人種なのよ」
と涼しい顔して子供に教えるグレゴリーの妻が、マンデラの顔を合わせた後半には考えを180度改め、成長した息子でさえもマンデラを師のように仰ぐまでになる。
これは凄いことだ。

これを見れば、実際会いその人間と向き合えば歪んだ価値観も変えることができる事が分かるのに、現代のネット社会を鑑みればこれと逆行しているのだから互いの溝は広まるばかり。
アメリカの現在の人種差別の問題はまた南アフリカのアパルトヘイトとは要因は異なるのだけど、マンデラのような強固で真っ直ぐな指導者が先導して大きく未来を変えてくれることを祈るばかりである。
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