サマセット7

スター・ウォーズ エピソード4/新たなる希望のサマセット7のレビュー・感想・評価

4.0
スターウォーズシリーズ公開順第1作目。
作中時系列では正伝のエピソード4にあたる。
監督は「アメリカングラフィティ」のジョージ・ルーカス。
主演はエピソード4から6までの三部作通してマーク・ハミル。
他に「インディジョーンズ」シリーズや「ブレードランナー」シリーズのハリソン・フォード、「ブルースブラザーズ」のキャリー・フィッシャーが共演。

遠い昔、はるか彼方の銀河系で…。
銀河系は帝国軍の圧政下にあった。
反乱同盟軍は帝国の宇宙要塞の設計図を盗み出すことに成功するが、帝国に仕える恐るべき力を誇る暗黒卿ダース・ヴェイダーが、設計図の奪還と反乱軍本拠地の発見に乗り出す。
帝国軍が迫る瀬戸際、反乱軍のレイア姫は、ドロイドR2-D2に設計図と協力依頼を託し、「オビ・ワン・ケノービ」という人物のいるという辺境タトゥイーンに向かわせる。
タトゥイーンに降り立ったR2-D2と相棒の通訳用ドロイドC3POは、ひょんなことから売り物にされ、ある家族に購入されることになる。
その家族、叔父夫婦の元で養育されていた若者の名はルーク・スカイウォーカーといった。
フォースの導きにより、若者は銀河の未来を賭けた戦いに巻き込まれることになる…。

史上稀な大成功をおさめたスペースオペラシリーズの第一弾。
1977年としては驚異的な特殊効果と印象的な音楽、サウンドエフェクトなどを駆使して、斬新なSFアドベンチャーの世界を描き、世界中で記録的な大ヒットとなった。
アカデミー賞7部門受賞。
本作は従来サブカル的マイナー分野と見られていたSF映画のメインストリームに届く大ヒット作として、また、SFXを駆使した先駆的作品として、後の映画界に絶大な影響を与えた。
極めて歴史的意義の大きい作品である。

当時斬新だった特殊効果については、今となっては、最新技術で作られた「ガーディアンズオブギャラクシー」などの近年のSF作品に比べれば、後にCGを用いて補正を重ねたことを踏まえても見劣りすることは否めない。

しかしながら、本作は今見てもなお新鮮な普遍的な魅力のある映画であり、明らかに単なるSFX頼りでヒットした映画ではない。
私如きが本作の多様な魅力を語るのもおこがましいが、あえて私なりに注目したいポイントをいくつか挙げる。

本作の魅力は、その多くを、創作者ジョージ・ルーカスの独創的発想により造形された世界設定に依っている。
その一つは、ライトセイバーであり、これを操る「ジェダイの騎士」という存在である。
宇宙を舞台にしたSF世界で、振るとブンブン鳴る光の刃を操り、サムライっぽい古強者が、チャンバラを繰り広げる。
どうやらそのサムライっぽい人は、フォースという妖しい超能力を使い、何らかの高尚っぽい東洋的な思想を持っているようだ。
この設定のエキセントリックさとライトセイバーの外観的なインパクトは、今見ても極めて独特であり、このシリーズを唯一無二にしているように思う。
印象的なのは、オビ・ワン・ケノービが絡んできた悪漢の腕を切り捨てる「用心棒」オマージュのシーンだが、本作のオビ・ワン・ケノービの設定的カッコよさは、人の中二心を震わせるものがある。

そしてどうしても本シリーズと切り離せない魅力を放つのは、映画史上最も有名な悪役、暗黒卿ダース・ヴェイダーであろう。
その黒マスクに黒マントの視覚的インパクト!
コーホー、という特徴的な呼吸音!
冒頭の反乱軍兵士を片手で締め上げ、縊り殺す様の冷酷ぶり!
同僚を冷然とフォースの力で黙らせる非情さ!
そして終盤の(本作時点では)謎めいた因縁に自らケリをつける強さ!
ラスト、自ら攻撃機を駆り、反乱軍機を次々と撃ち落とす技量!
すなわち、圧倒的な悪!
こちらも魔術的な魅力がある。

本作は、ルーク、ハン・ソロ、チューバッカ、レイア姫、2機のドロイドとオビ・ワンの愉快な一行の冒険譚である。
一行の特に若いルーク、ハン・ソロ、レイア姫の3人によるわちゃわちゃした軽いノリの会話は、作品に明るいリズムを生んでいる。
この辺りの青春もの描写は、「アメリカン・グラフィティー」で最初のヒットを飛ばしたジョージ・ルーカスの得意とするところ。
こうした青春アドベンチャーとしてのキラキラ感も、今なお見るべき今作の魅力だ。

今作がいきなりエピソード4から始まり、それが冒頭から明示されている点も独創的だ。
過去の戦争で、ルークの両親やジェダイの騎士たちに何があったのか?
恐るべきダース・ヴェイダーはジェダイの技を操るにも関わらず何故帝国に仕えているのか?
オビ・ワンの過去とは?
こういった謎が本作で示され、ストーリーを牽引していく。幾つかの謎は本作単体では明かされず次のエピソードを見る動機となる。

今作のテーマは、「若者の旅立ち」であろうか。
ルークは叔父夫婦やとオビ・ワンという大人の庇護下から旅立ち、ハン・ソロ、レイア姫といった新たな仲間たちや新たな世界、強大な敵と出会う。
物語は本作で通過儀礼的な冒険を経て、一つの結末を迎えるが、その先の運命との対峙が暗示されている。
ルークの旅立ちは、若きジョージ・ルーカスの前人未到のシリーズの幕開けとも重なっている。

見るべきところの多い本作だが、大事なところの演出が奇妙に淡白だったり、他方で物語上どうでもいいところを異様にグダグタ描いたりしていて、妙な味を出している。
特定の年代の者には、もはや聖典と化している今作なので、これはこれで、ルーカス独自の語り口として飲み込むのが吉であろう。

歴史的シリーズの幕開けを飾る楽しい第一作。
ちなみに私はエピソード1から6までは何回か見ているが、その後のルーカスの手を離れディズニー傘下となったエピソード7以降やスピンオフには触れていない。
映画熱の高まっている今のうちに、食わず嫌いはやめて、新シリーズにも手を出してみようかと思っている。
まずは、旧6部作を公開順に振り返っていくこととしたい。