まりぃくりすてぃ

お買いもの中毒な私!のまりぃくりすてぃのレビュー・感想・評価

お買いもの中毒な私!(2009年製作の映画)
3.4
『プラダを着た悪魔』のちょっと後の後発作品だけに、あの映画の悪いとこを一つクリアしてる。
すなわち、やたらな美女(アンハサ)を主演にして “みにくいアヒルの子” みたくヒロイン一人を恒星にして(美センス衣裳も見せつけて見せつけて)スター好きの安心好きの大衆にウケちゃう、、という価値のこしらえ方を本作は拒んだわけなの。

まず、あえてセンス悪めな衣裳の多用で私たちの肩をほぐそうとしてくれた? そこはわかんないけども、主演アイラ・フィッシャーはパッとしません(揺れムネはあるけど)。でも、プッとかピッとかペペポッとかしてるっぽい、この、美女じゃなさがいいんだよ! 共演者たち一人ひとりを彼女が(潰さずに)引き立ててるもん。助演者たちを一人ずつ咲かせてゆく、まるで花畑の水撒き人みたいな主演者って、尊くない? 助演者たちのキャスティングがほぼ全員最高、ってことでもあるけど。 
そう、主演以外は、見た目からして最高の人たちです!! 台本上の性格・言動すべてすばらしい上に。映える映える。美男美女ではないパパママとかも(借金取りとかも)、見え方が特上。
特に特に、主人公の親友スーズ役のクリステン・リッターが凄いよ! スーズと主役レベッカがルームメイトとして一緒にいる場面すべてすべて、地球最高レベルのガールズムービー! この顔がおそらく観賞者はみんな大好きであるのは言うまでもないだろうけど、顔だけじゃなく彼女の発する彼女にまつわるすべて(言葉から一挙手一投足までも)が主演者とともに完璧超え!! 情けないヒロインとともに、だ! ヒロインもついでに綺麗だったら、とか想わせない。単に正解な組み合わせだってこと!
主人公のラブコメ相手ルーク役のヒュー・ダンシーにも大満足! 役者がイケてる上に、役柄もすごくいい! いい男なのに、いい人だ!!! ヒロインとの向かい合い方がとにかくいい。 図々しいヒロインとともに、だ。これまた正解な組み合わせじゃん!
ほかもみんな、映えと言動と両方印象的かつ適材適所なんだけど、脇役の中では自助会の新リーダーのコルチ役のウェンディー・マリックが綺麗でした。
何というか、スーズやルークやコルチや借金取りやパパなんかを主役にみて本作を味わってみるのも楽しいな。  

で、肝心要の、主演・主役なんだけど、、、、
ワガママでノホホンとしてて明るくて、悪気はないけどやっぱり独走しやすい、いわゆるB型キャラ(語弊ある? 私は非B。笑)に、自業自得を回避しまくりたがる甘ったれ精神を染み込ませた、奇妙なスポンジ性のレベッカを、アイラ・フィッシャーがホドよくホドよく(エフォートレスっぽいんだけど、たぶん考えぬいてコース的にはド真ん中的に)演じてます。極めれば『悪魔のいけにえ』に近づきうるヒロインが、飄々としたゆるさにモコモコとどまってるから、キ●ガイめな私なんかからすると(ド真ん中といえども)物足りないし、逆に常識派の映画ファンからは「こんな女には感情移入できない! ただのクズじゃん。つまんないよ」と顰蹙買いまくるみたいな隙がある。でも、半端さが可愛いんだな。
可愛い内面なんだけど、半端ではあるな。
もうちょっと厳しくいえば、、
お買い物中毒者への、普通人たちの同情をちょっとぐらい引こうとしてる話なのか、普通人たちをどんどん置いてきぼりにすべく彼女が不条理ばかりを突っ走る話なのか、作り手の方向性が結局 “ラブコメというゴール” に限定されちゃってるのが惜しい。
それと、プロットはかなりしっかりしてて面白いのに、展開面を台本が早口すぎる感じに時々わかりにくくしてた。雑誌社への求職や採用やそのほか立場の変化にかんすることなどで。
同じく原作あり同士だからやっぱり比べちゃうが、私は『プラダを着た悪魔』よりもこっちが、主演含めたキャスティングの正しさの分だけずっと好き。痛快じゃないけど可愛いよ。一人の明るい情けない図々しい問題児を、排除せずイケてるイイ人たちが寄ってたかって信頼したり振り回されたり負けたりして救ってあげるこの話は好き。みんなイケてて、みんなイイ人たちだった!!!!

[つたや]