被害者が加害者に同化して殺人を犯す流れ、犯人の身代わりになり犠牲となる身内、キチガイの殺人鬼、文字通り「アート」な殺人、叫び、落下、異様な絵画、猫、犯人の手がかりとなる音、獲物を狩る視線……この映画から始まり、この映画にダリオ・アルジェントのすべてが詰まっている。迷宮のような建物がないぐらいか。
二重扉に閉じ込められる冒頭がとにかく素晴らしい。あの画廊のスタイリッシュさ、暴力への無力さとジワジワ追い詰められる死、それが終盤で反転する展開もまた見事で、このオープニングのショックでアルジェントは今日まで映画を撮り続けることができていると言っても過言ではない。
改めて見てやけにじっくり作っている。どの作品もこれだけ丁寧に撮れば良いのに、そうはしない。物語が壊れるほどもっと過激に、暴力は強烈に、作家性を高めるだけ高めて、アーシア巻き込んで狂った映画のその先まで行こうとするダリオ・アルジェント。鬼であり天才ですね。『サイコ』のグサグサをそのまんまやっていたりして、当然ヒッチコックの影響は大。アルジェントとデ・パルマはヒッチコックの子ども。
