ダリオ・アルジェント監督、30歳のデビュー作。音楽はエンニオ・モリコーネ。
イタリアを旅行中のアメリカ人作家サムは通りがかりの画廊で女が襲われているのを目撃し、止めに入ろうとするがガラス壁に阻まれる。女は刺され犯人は裏へ逃亡。サムは駆け付けた警察に容疑者として連行される。街ではブロンド女性を狙う連続殺人が起きていて、嫌疑の晴れたサムは独自に取材調査を開始する。。。
映像の組み立てと美術がとても好みで、ミステリー仕立てのシナリオにも隙が無く最高に楽しめた。個人的には「サスペリア」以上に好きなところが多かった。
冒頭の劇場型犯罪で心を掴まれた。画廊にも恋人の部屋にもアートなオブジェが置かれ、小道具へのフェティッシュなこだわりが伝わってくる。謎解きの鍵となる不気味な絵画と、その作者による猫の多頭飼育もサイコサスペンスの絶妙なスパイスとなっていた。
映像に派手さはないが、最初からラストまで全カットに創意工夫が感じられた。主人公の回想に短く挟まれるフラッシュバックは「犬神家の一族」(1976)を連想した。同じく猟奇的な連続殺人の映画であり、市川崑監督は本作を観て影響を受けたかもしれない。
モリコーネの劇伴は主張しすぎることはなく適度にニューロティックな雰囲気を醸し出していた。可愛らしいサウンドで猟奇的な雰囲気を醸し出す手法としては草分けなのではないだろうか。
映画全体が実に絶妙に仕上がっていて、アルジェント監督の才能と底力がストレートに味わえる傑作。