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忘れられた人々のadeamのレビュー・感想・評価

忘れられた人々(1950年製作の映画)
4.0
ブニュエルがカンヌで監督賞を受賞したシリアスな傑作社会派ドラマ。
戦前の活動では映画監督というよりシュールレアリストという呼称がふさわしかったブニュエルが初めて主要な国際映画賞で評価を受けたメキシコ時代の代表作です。
貧しいながらも懸命に生きる人々をロケーション撮影で生々しく映し出すスタイルはネオリアリズモの作品群と見まごう雰囲気ですが、帰る場所などない少年たちのヒリヒリとした熱気は「シティ・オブ・ゴッド」の原型のようにも感じられました。
教育とは無縁で犯罪行為に手に染める日々を送る少年が罪悪感と求愛を垣間見せるも、年長者たちに引きずり降ろされる姿が哀しく胸を打ちます。
悪夢のシーンは少年の心境変化の発露として重要な場面でしたが、舞台を客席から遠巻きに眺めるような画面構成と必要性の分からないスローによって、センシティブさよりも異様な不気味さを感じさせるあたりにブニュエルらしさを感じました。
結末はその終えどころの唐突さも相まってあまりにも容赦のない強烈なラストシーンでした。
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