イチロヲ

情婦マノンのイチロヲのレビュー・感想・評価

情婦マノン(1948年製作の映画)
4.0
フランスでレジスタンスに参加している青年が、ナチス兵を相手に商売している若い娼婦に惹き寄せられていく。第2次世界大戦下のフランスを舞台にして、青年と娼婦の逃避行を描いている、ラブ・ロマンス。

頭の中が抗ナチスのことで一杯になっている青年が、娼婦の道を選んでいる女性との出会いをきっかけにして、自己実現のドラマを繰り広げる。有事にともなう混乱状態において、安定した生活を手に入れることの困難さが切実に描かれる。

日活ロマンポルノの脚本家・桂千穂氏が霊感を得た作品ということだけあり、ロマンポルノの基盤となる要素が散見される。とりわけ、人間を人間として扱わないグロテスクな行為が、ポジティブにもネガティブにも転がるところが醍醐味となっている。

娼婦時代に培った能力を活かしながら、「ずる賢く生きていくための手練手管」を覚醒させていく展開が非常に面白い。映画的演出も冴えわたっており、すし詰め状態の客車シーンと終局のユダヤ人亡命シーンが印象に残る。
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