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サインのni9neのレビュー・感想・評価

サイン(2002年製作の映画)
3.0
2000年生まれの自分がMナイトシャマラン監督の過去作に興味を持って評価の高いホラー映画「サイン」を見ることにした。

結果から言うと、シャマランのサインは劣化するタイプの傑作だったと言える。この作品を今だに見たことのない2000年代以降生まれが見ても、はたまた昔を懐かしんで4、50代くらいの方が見ても、はてこんなものだったのか、と思うであろう。

ここでいう劣化は技術的映像での劣化(すなわちCG技術等の未発達)を指摘するものではなく、その作品の重心が時代遅れになっていることについて述べるものである。というのも、個人的には映像面で心が離れるほど酷い退屈と思ったシーンはなく、むしろ今の数多ある映画のほとんどよりもカット割りやテンポはいいと感じた。

思うにこの作品が評価されたのはホラーとしての怖さを描きながら登場人物の心情を美しく描けている部分だったのであろう。しかしこれを現代っ子の視点から見ると、「怖くもないし登場人物のリアクションも浮いてて現実味がない」という感想を抱いてしまう。これを聞くと「今の若造にはこういう映画の良さがわからんのやろうな」と言う大人たちもいるだろう。だけどそう言う大人たちには想像力を働かせて欲しい。この映画における恐怖の対象である「宇宙人」も映画のお父さんの葛藤する「信仰心」もすでに現代に生まれた「若造」達にとっては新鮮味のかけらもない腐ったスルメのような代物なのだ。人の恐怖や興味を駆り立てるものには少なくとも2つの要素がある。それはそのモノが謎に包まれたものであること、そしてそのモノが今の社会や個人の生活に対して一定の影響力を持ちうるモノであることだ。当時の時代背景を鑑みると「宇宙人」も「信仰心」もこの両方を満たしていたのだろう。

それにしても今回この映画を見ることでジェネレーションギャップとその影響力を感じることができたので良い経験だった。自分も大きくなって今の時代の良さについてあまり語りすぎて「時代遅れな大人」にならないようにしたい。
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