Growltiger

王様と私のGrowltigerのレビュー・感想・評価

王様と私(1956年製作の映画)
3.5
シャム(現・タイ王国)の王の子供達の家庭教師にイギリスから赴任したアンナ。
東南アジアと西洋の文化の違いに困惑しながらも徐々に王とアンナは心を通わせていく。
1951年にミュージカル上演され、1956年に映画化された作品。


映画館で渡辺謙主演の舞台版を先に見たので映画版も鑑賞。

子供達と交流し、時に王様と衝突しながらも自らを貫くアンナの姿は「サウンド・オブ・ミュージック」のマリアにも少し似てるでしょうか。
当初は恋愛ストーリーかと思ってましたが、実在の女性がモデルとなっていて異文化への理解や女性達の生き方が印象的でした。

アメリカなどでは人気の作品ですが、作品の舞台となったタイでは今でも上映禁止のちょっと問題作でもあります。

というのも、今作はタイでは不敬罪にあたるそうで...。

確かに「西洋の女性が異国の王に意見して、王が感化され近代化に近づく」って構図はどこか西洋の上から目線にも感じますし、実在する国や人をモデルにしてる以上、史実と異なる脚色は問題視されてしまうでしょうね。
個人的にも地面に平伏すお辞儀とかはその国の作法、文化もあるから一概に西洋の価値観で「蛙のように這いつくばる必要はない」と口出しする事でも無いのになーと思いました。
そういう部分や、ラストの急展開はあまりのれなかったものの、作品自体は悪くありません。

アンナ役のデボラ・カーは美しくて、豪華なドレスも映えますね。
映画版のアンナの歌声は吹き替えで、「最強のゴーストシンガー」として知られるマーニ・ニクソンが担当。
5年後の「ウエスト・サイド物語」でもマリアの吹き替えをされていましたが、少女のマリア役より落ち着いた女性の声色での歌唱。流石でした!

王様役のユル・ブリンナーはブロードウェイのオリジナルキャストでもあったんですね。この役が当たり役と呼ばれただけあって見事な王様でした。鋭い眼光にスマートなシルエットがとてもカッコ良い。スキンヘッドがこんなに似合う人も珍しいです。

ビルマ王からの贈りものとしてやって来たタプティム役のリタ・モレノ。
彼女は5年後の「ウエスト・サイド物語」のアニタ役でアカデミー賞助演女優賞を受賞した方ですが、今回は役柄のせいもあり控えめで目立たなかった印象。
でもアニタとは違う雰囲気で美人でした。

楽曲は序盤に歌われる「I Whistle a Happy Tune」なども元気が貰えそうな歌で良かったですが、やはり有名な「Shall We Dance ?」は名曲ですね。
ホールで2人踊るシーンも素敵でした。