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老人と海 ディレクターズ・カット版のhoteltokyoのレビュー・感想・評価

4.5
ジャン・ユンカーマン監督が国境の島、与那国島でたった1人で100キロを超えるカジキを狙う80歳越えのおじいちゃんを追った2年間のドキュメンタリー。

「おじぃは、おばぁを愛し、海を愛して、今日も1人漁に出る。そして本作の東京公演一ヶ月前に、漁に出たおじぃは、海へ還っていった。」というコピーが目に止まりDVDを購入。サバ二と呼ばれる小型船で1人で漁に出て、おばぁのためにカジキを狙い、時間が止まったかのような小さな漁港で仲間と談話し、夏は祭りでお酒を飲み、朝になるとまた漁にでる、この恥ずかしがり屋の小さなおじぃが、荒れ狂う海でカジキと対峙する2年間を追う。余計なものがなにもない、あるのは町の音、波の音、ボートの軋む音。

てくてく道を歩くおじぃの背中はちんまりとしているのだが、大魚と対峙するおじぃの背中は、まるで息を呑むほどの熱量で、人間の豊かさを可視化するとすれば、人が魚と格闘している姿がよく当てはまる。そして、漁から戻ったおじぃがささっと真っ白いシャツを羽織るシーンは、ヘミングウェイの『老人と海』そのものであり、思わず、息を呑んで観てしまった。
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