Wisteria

湖の琴のWisteriaのレビュー・感想・評価

湖の琴(1966年製作の映画)
4.6
佐久間良子を観るための作品。
とにかく綺麗、奇跡的なほど綺麗だ。

水上勉原作の映画と佐久間良子の組み合わせはある意味最強。五番町夕霧楼も越後つついし親不知も良かったけど、一番好きなのは本作だ。何しろ佐久間良子の美しさが際立っている。

ただし、この作品、佐久間良子演じる主人公のさくが、なぜ最後にあのような道を選んだのかについて、ほとんど何も語っていない。
三味線の師匠に無理矢理、操を奪われたからだと早合点してはならない。
手篭めの様子を文芸的な舞踏のシーンに代えて象徴的に描いてはいるが、さくの身体の中に女の悦びが横溢したことは容易に想像できる。そんな女に目覚めた自分と折り合いをつけることができず、さくは師匠の元から逃げ、相思相愛の宇吉にただ一度だけ抱かれるために戻ってくる。なぜ宇吉に抱かれたいと思ったのか?なぜ、その直後に自死を選んだのか?
水上勉の原作は未読だが、さくは師匠の子まで宿していたとなっている。こうなると、俄かにさくの女としての業が浮き上がってくるではないか。女の業…
こうしてみると、本作のヒロインであるさくはなかなか複雑な役柄だ。そんなさくを佐久間良子は魅力的に演じている。否、演じているようには見えない。さくと佐久間良子は同化している。これは佐久間良子を観るための作品なのだ。
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