まりぃくりすてぃ

金色夜叉のまりぃくりすてぃのレビュー・感想・評価

金色夜叉(1937年製作の映画)
4.6
お、お、おも、面金色い! じゃなくて、面白い!

[京橋・国立映画アーカイブ  赤澤大助監督による1934年浪花節サウンド版45分間と併せ、こちら清水宏監督の1937年松竹大船ロング(77分)初トーキー作も上映! どっちにも拍手気分!! どっちも、原作どおりに『ちはやふる』を想い起こさせるカルタ場面でオープン。。。]

清水ロング版。
貫一役の夏川大二郎さんは、嵐の大野智を体格良くして倍ほども美しくした感じで、まなざしに常に宿る池部良的な愁いが書生時代から高利貸し時代へと進むにつれて作品によく馴染み、美テイスト。(ほかにも同級生役でイケメン数名。)
お宮役の川崎弘子さんは、夢二的な“なよ美人”。文句なし。
さて、観客全員お待ちかねの、熱海での蹴りシーンは、張手らしきもの一発(当てる瞬間はカット?)と、ふわっとした正面蹴り一発(こっちも同じく)を、遠慮っぽい距離で撮る。────私は幼年期に歴史図鑑の紹介挿絵で彼が彼女をほとんど全力で踏みつけてる(既にうずくまってるのにさらに踏んでる)ふうな足蹴シーンを強く印象づけられたせいで、今回本作でのそのユル描写が物足りなくて(そりゃ暴力はおっかないけど、、、)単に「とりあえず貫一、やっちまったわね」と悪い意味で苦笑。その後も、物語の数カ所でいろんな男性たちの勝手な口ぶりにも失笑少々。でも、、、、時間を追うごとに本作にては貫一の事情と心理にきちんと沿うリアル脚本が効果を上げてきて、、、、脇役の悪女(三宅邦子さん)も効いて、、、終盤ついに、私は貫一を内外両面でカッコいい!と認めるに至ったよ。
脚本の勝利。完結感高いザ・ドラマ。
銀行頭取役(いかめしいけど、ほんの端役)を真面目一本槍に演ずる笠智衆さんが見れたし、「昔の邦画って最高」の思いが高まった。




上記のように優秀な通俗劇だった清水監督版ロングと比べ、併映の赤澤監督版ショートの方は、物語が尻切れトンボ。でも風物の静止画像の多さに品格があり、序盤の女子二人の羽根突きラリー場面なんかがさりげなく国宝映画っぽさを生み、蹴りに至る浜辺場面でのお宮の表情変化&撮影角度が芸術表現の極みだったりして、「面白い」というよりは「素晴らしい」。
それにショート版は貫一役の片桐敏朗さんの凛々しさがまさに「二枚目な書生!」だから、特に前半(書生時代)すっごくナチュラルに映えてた。(高利貸しとなってからはどことなくの不足感もあった。ちょうどロング版の夏川大二郎さんとは逆パターンだ。)
それとやっぱり、お宮役の四条華子さん。白塗りのお顔がちょっと大きめで、美人なのかブスさまなのかなかなかハッキリしなかったけど、上記のとおり浜辺での「貫ちゃん、ゆるしてちょうだい」あたりは完璧な美人角度を次々披露して完璧に妖艶だった。足蹴も、ロング版よりもキレがある。
ただ、アッサリ展開を、親友役が仕切りすぎな気もした。