Ricola

上海特急のRicolaのレビュー・感想・評価

上海特急(1932年製作の映画)
3.6
さすがのマレーネ・ディートリッヒの圧倒的な存在感。
ストーリーは正直あまりピンとこないけれど、ディートリッヒ様の美しさと、彼女演じる上海リリーのギャップのあるキャラクターがとてもよかった。


フイ・フェイという美しい中国人女性、犬を連れた口うるさいハガティ夫人、フランス語しか話せない大佐、神学博士のカーマイケル氏などといった個性豊かなキャラクターたちが、上海特急に乗り込む。しかし列車ごと内乱に巻き込まれていく。

リリーのかつての恋人ハーヴェイとの駆け引きというか、恋愛のゆくえにもその騒ぎは影響する。
したたかなリリーかもしれないが、彼女の繊細さが強さを纏ったその内にあることがわかるシーンにぐっときた。
自分の気持ちがその状況でなかなか伝わらないリリーは、切なげに扉にもたれかかりタバコをふかしながら、上を向き目を左右に動かして涙を目に溜める…。
その弱さを見せまいとする健気な姿こそ、ディートリッヒ自身のスターイメージまたはパブリックイメージの強さというイメージの表裏一体にあるものに感じた。

「どうやってキスするの?」
「恋人たちは隠れてキスをするために駅に来るのよ…」
あまりにもかわいすぎるラストにも、リリーの健気さとかわいらしさ、そして色気を感じられる。

ストーリー自体は、列車の乗客たちのやり取りを軽快に描きながらも、基本的に緊張感漂う出来事にハラハラさせられる。
そして事件や噂に振り回される恋人たちのやり取りにやきもきしつつ、ディートリッヒという俳優を象徴するような印象的シーンによってさらに彼女を好きになった。
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