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妖星ゴラスの教授のレビュー・感想・評価

妖星ゴラス(1962年製作の映画)
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荒唐無稽過ぎるプロットが乗り切れない感も多分にありつつ。およそ60年ほど前の作品だと思うと中々に感慨深い。
数あるディザスター(災害)映画の中でも、まるで生き物のような「ゴラス」という惑星が地球に衝突しそうなのでどうしよう?というそれだけなのだが、監督である本多猪四郎の作家性というのが色んなシーンで見えてくる、のが一番の見所。

冒頭の海辺で「誰も見てないから脱いじゃえ」と白川由美、水野久美の(当時の)現代風女性象の奔放さ、からカットバックしてまず田崎潤らが乗り込む「隼号」の打ち上げという「あ!」となる演出、からの、尺をそれなりに割いての「殉死」の件。
先の「戦争」からの価値観が意識的であれ、無意識的であれ反映されている。

本多作品にはその前後の若者たちの喧騒わニヒリズムと、取り残された戦中の軍国精神がよく対比されて出てくるが、本作にもかなり多い。

もう一方は「科学」と「政治」の関係。または「政治」と「庶民」の関係。
このような非常事態にとって「政治家は何の役にも立たない」と政治家自身に言わせていたり、タクシーの運転手に「計算上ではそうかもしれないが、いつもこういった危機は訪れてきたが本当に人類は滅ぶのか?」と言わせてみたりと、コロナ禍の現代を踏まえて観ると「ドキッ」とする描写も多い。

肝心の「ゴラス」攻略についてはもう古い映画であり、SF的な荒唐無稽と割り切るしかなく、加えて登場する「南極怪獣マグマ」というセイウチだか、オットセイだかわからないが怪獣はやっぱりいらなかったんじゃないか、とは思う。
しかし水没した東京のラストシーンから、再生していく世界を期待するラストは素晴らしかった。
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