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ギターはもう聞こえないの白のレビュー・感想・評価

ギターはもう聞こえない(1991年製作の映画)
4.0
脚本だけを追えばもはや語られ尽くされていそうな予感もしないではない陰惨な男女の愛憎劇というやつも、ガレルの演出術に掛かれば、観る者はそれを美しい愛の思い出としてスクリーンに映し出された景色を記憶することになる。登場人物たちのクロースアップを中心に構成されたシークエンスは、彼女らの存在する様々な空間を見渡すことも、空間的飛躍の説明も拒否するようにして、停滞感を帯びた親密さを醸成する。しかしながら物語は感傷と言った類の言葉にそぐわない一種の叙情に満ちている。
それにしても永遠の現在など存在しないという事実ほど、「愛」にとって残酷なものはないのではなかろうか。
開け放されたトイレ、そこでいすくまるように抱きつく男女、そして2人の愛を祝福するようにどこからともなく響くギターの幸福なサウンド。
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