ゴト

モスクワは涙を信じないのゴトのレビュー・感想・評価

モスクワは涙を信じない(1979年製作の映画)
3.9
カメラワークやその中を行き交う人々の動き、そして生き生きとした登場人物のキャラクター。観始めてすぐにかなりアメリカナイズされた映画だな、という風に感じた。

でも、しばらく観ているとそれは誤りで、そう思わせる画面向こうの瑞々しい若者達こそ、ソ連という国に生きる人々のありのままの姿だったのだ。あまり表に出てこないし、政治的な体制が違っていたりで、どうもよく分からないイメージが強いが、なんてことは無い、その辺は西も東も大して変わらないということなのだろう。

物語は2部構成になっていて、第1部は1950年代、第2部はそこから20年後の1970年代後半、つまりこの映画が封切られた正にその時代を描いている。

これによって当時の観客達は、映画を観ながらそこに自身の20年を重ねて楽しむことが出来る。スプートニクの打ち上げに成功し、これからより良い時代になっていくと皆が信じていた頃から20年、蓋を開けてみれば思っていた程には成長しておらず、国の経済もすっかり停滞していた。この何とも言えない虚しさをありのまま描いたからこそ、この映画は多くの共感を得られたのだと思う。

そして、そんな20年を困難に見舞われながら、逞しく生きる主人公カーチャの姿もまた多くの共感を得られただろう。

全体的に温かみのある雰囲気でまとまっているからだろうか、女性の一代記的な要素もあるので、何となく朝ドラを2時間半にギュッとしたような印象。最後にようやく愛を手にすることが出来たカーチャのその顔を観ていると、なんかんやで今の時代も悪くないと言っているように感じる。

女性に見て欲しい映画。
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