安堵霊タラコフスキー

ベンゴの安堵霊タラコフスキーのレビュー・感想・評価

ベンゴ(2000年製作の映画)
4.4
トニー・ガトリフが自身の体験を基にしたこともあって、ジプシーらの奏でるエキゾチックな音楽がメインの情熱的な作品になっていた。(というか冒頭10分演奏とダンスシーンで押し切る力技が凄い)

話はジプシーの部族間の諍いに関するものだが、8割方踊りか歌のシーンで占められており、ジプシーの歌と踊りを映したいというエゴイスティックな姿勢もさることながら徐々に歌が諍いにより掻き消されていくことで争いの愚かしさや虚しさを表しているのもまた良い。

自分は基本的にドグマ95的で雑な手持ち撮影は嫌いだけど、この作品においては手持ち撮影から場の熱気も伝わってくるようで悪くない。

今晩は愛して頂戴ナを髣髴とさせるラストの音響効果も哀愁と熱情が感じられて実にエモーショナルだった。

昔は物語性の薄いこうした作品があまり好きではなかったけど、今は単純な物語で描けない映像や音の表現で構成されたものこそ真に総合芸術的な映画ではないかと強く思う。