ごろちん

ヴァンダの部屋のごろちんのレビュー・感想・評価

ヴァンダの部屋(2000年製作の映画)
3.7
電車内で「コホンッ」と空咳すればすぐに冷たい視線を感じるこのご時世、ヴァンダの「ゲホッ!ゲホッ‼︎ ぺッ!」といういかにもヤバそうな咳を聞かされ続け、自分の眉と眉の間には終始皺が寄っていた。
もしヴァンダの部屋に招かれたら「すみません、今日母親の誕生日なもんで…」と言ってそそくさと退散したことだろう。

再開発で破壊と再生が行われる街、その中で破壊のみ約束されたヴァンダ。アルミ箔をライターで炙り、すかさずタバコを吸う姿に希望の文字は見当たらない。妹とクスリをキメながら部屋で話す内容といえば過去の話と空虚な話題ばかり。生活を守るためだけにある汚部屋は人が操る機械によって無情にも侵食される運命にある…。

強者は希望に向けた活動を行い、弱者は泥舟のように成り行きに身を任せるしかないという光と影。

この作品がドキュメンタリー映画ということを後から知って驚いた。あの咳はやっぱりリアルな咳だったのか…。
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