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悲しみは空の彼方にのたにたにのレビュー・感想・評価

悲しみは空の彼方に(1959年製作の映画)
4.1
【みんないつまでも一緒にいられますように】2022年142本目

原題「Imitation of Life」
つまり、人生の模倣。

1947年のコニーアイランドの海岸で、娘を探す未亡人のローラの姿から始まる。

戦後アメリカ社会の中を生き抜く女性を、ローラとその娘、そして黒人のアニーとその娘という4人の姿から描いていく。

そこには人種や、性別、年齢、境遇などから来る困難が存在し、彼女たちは"なりたい自分""ありたい人生"と、現実との葛藤に悩まされていく。

ローラは5年のブランクを経て、遅咲きの女優を目指して奔走する。
その娘は母親の努力によって何不自由ない生活を送るも、ほとんどメイドの世話になり、子供であることに反抗心を持っている。

アニーは黒人として慎ましく生きることを受け入れているものの、その娘が黒人であることを認めず反抗的な態度をとることに頭を抱える。娘はアイデンティティに悩まされながら、自分を知らない夜の華やかな仕事へと身を潜めていく。

人生というのは模倣の連続なのかもしれない。なりたい自分が確かにいて、それはなりたい人物像が自分ではない別に存在するからである。

母親が大女優に憧れる。
子供が大人に憧れる。
黒人が白人に憧れる。

そもそもこのような二項対立が存在していると"思い込んでいる"我々は、人生を模倣せざるを得ないのかもしれない。

アニーのように現実を受け止めることが、必ずしも幸せとは限らない。
空に夢を思い描くことだって時には必要かもしれない。

しかし、我々の人生は誰かの模倣によって成り立っているということを知ることによって、諦めと憧れの境界線を吟味することができるようになるはずだ。

一見華々しい明るいハッピーエンドのストーリーかと思いきや、この映画には人生
のテーマがたっぷりと詰め込まれている、壮大な物語で驚いた。
悲しくも素敵な作品でした。


個人的に恋人役のアーチャー(ジョン・ギャヴィン)の、良い意味で気持ち悪いハンサムオーラが滲み出てて良かった。

「良い骨格だ、、」

「恋に恋してるだけだよ」

こんなことサラっと言えちゃうところがまぁ、面白いポイントでした。
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