エリオット

悲しみは空の彼方にのエリオットのレビュー・感想・評価

悲しみは空の彼方に(1959年製作の映画)
4.8
なんかこのタイトルバック見た記憶がある…と思ったら、昔読んだ金井美恵子の映画レーザーディスクの評論集「愉しみはTVの彼方に」の表紙に使われていたのを思い出した。
当時はまだ映画を家で見るには地上波TVの他にはVHSかLDしかなく、ブルーレイはおろかDVDもなかった。そのうえTVといえば小さな四角い箱に過ぎなかった時代で、上記評論集のサブタイトルは本作の原題「Imitation of life」をもじって「Imitation of Cinema」と名付けられていた。

映画の方は、主に2組の母娘の人生を通して、恋愛はもちろん、成功と孤独や虚無、親娘の断絶と愛憎、人種差別などたくさんのストーリーを、素晴らしい脚本と音楽、美術、撮影などで全くノッキングすることなく滑らかに紡いでゆく超絶技巧のメロドラマ。
ラナ・ターナー(「郵便配達は2度ベルを鳴らす」の悪女のイメージが強かったのでちょっと意外)をはじめ役者陣の演技も素晴らしく、特に黒人の母親役のファンタ・ムーアには泣かされて仕方がなかった。
ダグラス・サークの、というよりハリウッド製ドラマ全体の集大成のような気品漂う立派な映画だと思う。
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