秋日和

街の天使の秋日和のレビュー・感想・評価

街の天使(1928年製作の映画)
5.0
とっておきのドラムは破れる為にあるし、破れたドラムはジャネット・ゲイナーを隠す為にある。帽子を斜めに被るのか被らないのかは人それぞれで、はたまた肩に羽織らせたストールを敢えてはだけさせるのかどうかも個人の好きなようにすればいいと思う。
『幸運の星』で素晴らしかった男女の配置はこの映画でも顕著だった。出逢ったときに二人がどのような位置関係で、時が経つにつれてどのような変化を遂げていくのかを見ていくだけで楽しい。ジャネット・ゲイナーがチャールズ・ファレルに階段を下りさせない為に何をしたのか、彼女はどうして高い位置にいられなくなってしまったのか……ボーゼージは抜け目ない。それらの場面に繋がっていく、「幸福な涙を拭いて部屋を出た彼女が悲しみの涙を拭いて部屋に戻ってくる」シーンだって素晴らしい。同じ仕草をしたって時と場合によって全然違う意味合いを持つよね、と囁かれているみたいだった。例えば、恥ずかしがっている顔を彼に見られたくないが為にギュッと顔を押し付けた彼女が、今度は悲しい顔を見られたくないが為に彼に抱きついてしまった、なんてこともそうだと思う。
霧の中で灯されるマッチの火、不穏さを告げるいくつもの影。光と、その対極に存在するものを画面上に浮かび上がらせるボーゼージのメロドラマ。街の天使は、見上げたらそこにいるんだぜ。