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ライフ・イズ・ビューティフルの小のレビュー・感想・評価

4.3
午前十時の映画祭8で鑑賞。ラストで急にジーンとした。ちょっと図々しい男が女性を口説き落とすコメディかと思いきや、それは前ふり。後半でこの映画のテーマが明らかになり、ラストで親が子どもに与えなければならないものの本質が腑に落ちる。

ほぼ予備知識なく観た。場所はイタリア。主人公が何者かは良くわからない。友だちと車に乗り、どこかに向かっている間に、女性と出会い好きになる。その後、偶然を装い、何度も彼女の前に現れる(最近、観たアニメ映画の「ナカメ」作戦というヤツですな)。時代は第二次世界大戦前夜で、主人公がユダヤ人だということがなんとなくわかってくる。

やがて2人には男の子が誕生し、時代は第二次世界大戦中へ。となれば、言わずもがなの状況に陥った父と息子。2人のもとへ自らも飛び込んでいくユダヤ人ではない母。そしてここからが主人公の真骨頂。

彼は息子に「教えない」ことで息子の命と心を守った。彼が教えなったもの、それは「恐怖」「絶望」「憎しみ」。そしてラストに成長したであろう息子の回想の一言が入る「これが父が私にくれたもの」。それは自分的解釈では、恐れない、諦めない、憎しまない心ではないかと。

どん底でもユーモアを忘れない、人間性を失わない。これこそ親の強さであり、その強さを与えてくれるのは子どもである。

と、そんなふうに感想を考えていた自分にとってのプチ偶然は、この映画を観た翌日のテレビ番組(多分再放送)で、2014年2月14日に発生した栃木県鬼怒川の雪崩れで、乗用車の中に58時間閉じ込められながらも、生還した旅館の女将さん(当時29歳)と小学生4人(彼女の子ども2人と姪っ子2人)の再現VTRを見たこと。

女将さんの機転が命を救ったのだけれど、サバイバルのための冷静な行動もさることながら、印象に残ったのは、子どもたちに恐怖を与えなかったこと。パニックに陥らず、いつもの態度で子どもたちに接しただけでなく、五十音順に女将さんの妹さんの悪口を言い合うとか、クラクションを子どもたちにすきなように鳴らさせるとか、いかにも子どもたちが喜びそうなことをして気持ちを盛り上げた。

番組のインタビューで、女将さんが、救出された際、泣きじゃくったらしいけど覚えていないと話す一方で、子どもたちは、閉じ込められている間、怖いと思わなかったと。そして振り返るとお母さんに命を助けてもらった、と。

親は子のために強くなれるのかもしれない、というより親は子のために強くなければならない。その強さとは恐怖し、絶望し、憎しむ姿を子どもに見せないこと。それはすなわち「ライフ・イズ・ビューティフル」であると示すこと。もっと早く知りたかったけれど、今からでも遅くないかなあ。
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